セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 074:

てんかん重積発作に対してのホスフェニトイン単回投与後に急性肝不全をきたした一例

演者 金山 泰成(福岡徳洲会病院 総合内科)
共同演者 滝澤 直歩(福岡徳洲会病院 総合内科), 児玉 亘弘(福岡徳洲会病院 総合内科), 松本 修一(福岡徳洲会病院 肝臓内科), 松林 直(福岡徳洲会病院 心療内科)
抄録 【症例】71歳,女性【現病歴】右被殻出血後遺症ともやもや病術後(両側STA-MCAバイパス術)で症候性てんかんがあり,ゾニサミドを内服中.軽度の左片麻痺と高次機能障害があるがADLは自立,夫と2人暮らし.今回は朝6時に起床しないことを心配した夫が呼びかけに反応しない状態を発見したため救急要請となり当院搬入となった.【経過】 来院時の意識状態はJCS300,両側右共同偏視がありジアゼパム投与にて消失したため症候性てんかんの重積発作としてホスフェニトイン(ホストイン®)点滴静注を行い経過観察目的に入院となった.意識状態は徐々に改善し明らかな症状の訴えは認めなかったが入院後肝酵素上昇を認め,2日後にはAST 3000 IU/l ALT 3300 IU/l T-Bil 2.5mg/dl PT-INR 1.88 と急性肝不全の状態となった.保存的に経過観察したところ肝胆道系酵素は低下し,凝固異常も正常化した.全身状態も良好であったためリハビリテーション継続とした.急性肝不全の原因として,ウイルス肝炎マーカーや自己抗体は陰性であり病歴より入院時に投与したホスフェニトインによる薬物性肝障害が疑われたため,ホスフェニトインに対するリンパ球幼若化試験を行ったところ陽性であり同薬物による薬物性急性肝障害であったと診断した.【考察】救急現場ではけいれん発作もしくはてんかん発作が疑わしい場合,原因検索や治療とともにフェニトインを投与し再発予防を行うことが多い.近年静脈炎のリスク軽減目的のためホスフェニトインが多用されている.点滴静注にて速やかにローディングできるためあまり躊躇することなく使用している.添付文書には連用する場合は肝酵素などをモニターすることが推奨されているが,本症例のようにホスフェニトイン単回投与であっても急性肝不全をきたす症例があるため注意が必要であると考え報告する.
索引用語 ホスフェニトイン, 急性肝不全