セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 028:

腹膜透析の既往がない被嚢性腹膜硬化症の一例

演者 藤井 美緒(長崎大学病院移植・消化器外科)
共同演者 藤田 文彦(長崎大学病院移植・消化器外科), 三島 壯太(長崎大学病院移植・消化器外科), 夏田 孔史(長崎大学病院移植・消化器外科), 伊藤 信一郎(長崎大学病院移植・消化器外科), 金高 賢悟(長崎大学病院移植・消化器外科), 南 恵樹(長崎大学病院移植・消化器外科), 高槻 光寿(長崎大学病院移植・消化器外科), 黒木 保(長崎大学病院移植・消化器外科), 江口 晋(長崎大学病院移植・消化器外科)
抄録 症例は57歳男性。13年前より全身性エリテマトーデスの治療中であり、プレドニン5mg/日を内服していた。また、ループス腎炎に伴う腎不全にて5年前に血液透析を導入されていたが、腹膜透析の既往はなかった。2011年12月開腹歴のないイレウスの診断で入院したが、保存的加療にて軽快した。その後も同様の症状を反復し、外科的治療目的に2013年2月当科入院となった。腹部は腹水貯留のため膨満し、臍下にmass様の腸管を触知し同部位に圧痛を伴っていた。腹膜刺激症状は認めなかった。血液検査所見では、BUN、Creの上昇、低alb血症を認めた。血清補体価および抗ds-DNA抗体は正常範囲内で、全身性エリテマトーデスの活動性は低いと判断した。術前の腹部Xpでは、腸骨陵の高さに小腸ガス像が一塊となり、左上腹部にniveau像を認めた。腹部CTでは多量の腹水と、腹膜に被包化され一塊となった小腸を認めた。画像所見より被嚢性腹膜硬化症と診断し、症状を反復していること、経口摂取が困難であることより手術適応と判断し、手術を行った。まず右側腹部に12mmポートを挿入し、腹腔鏡で腹腔内を観察した。腹腔内には黄色透明の腹水を約4000ml認めた。腹膜は腹腔内全体で肥厚し、一部では白色結節状を呈し、小腸を被包していた。腹腔鏡下での被嚢剥離は困難と判断し、上腹部正中切開にて開腹した。小腸はTreitz靭帯から盲腸付近まで約1.5m程度に短縮しており、可動性は全く認めなかった。一塊となっている小腸の被嚢を慎重に切開し、小腸の癒着を解除した。小腸に壊死や穿孔の所見はなく、若干の浮腫はあるもののほぼintactであった。腹膜の一部を病理標本に提出したところ、線維芽細胞増殖を伴う線維性結合組織であり、一部に石灰化が認められた。被嚢性腹膜硬化症は腹膜透析症例での報告が多く、繰り返す腹膜炎が繊維素析出の原因と考えられている。本症例は腹膜透析の既往はなく、腹水穿刺による不顕性感染や免疫複合体の腹膜への沈着が被嚢性腹膜硬化症の原因となった可能性が考えられた。
索引用語 被嚢性腹膜硬化症, 全身性エリテマトーデス