セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専47:

肝右葉に対するchemolipiodolization後に肝両葉の多発腫瘤が消褪した肝細胞癌の1例

演者 森田 祐輔(飯塚病院肝臓内科)
共同演者 小栗 修一(飯塚病院画像診療科), 千住 猛士(飯塚病院肝臓内科), 矢田 雅佳(飯塚病院肝臓内科), 本村 健太(飯塚病院肝臓内科), 小柳 年正(飯塚病院肝臓内科), 福谷 龍郎(飯塚病院画像診療科), 黒岩 俊郎(飯塚病院画像診療科), 増本 陽秀(飯塚病院肝臓内科)
抄録 症例は82歳男性。高血圧症、2型糖尿病、C型慢性肝炎の診断で近医に通院していたが、2012年10月、腹部超音波検査で肝両葉の多発腫瘤を指摘され当科を紹介された。腹部CTで肝S8に最大径5.5 cmの腫瘤と肝両葉に径1 cm前後の多発腫瘤を認め、血中AFP 627 ng/ml、PIVKA-II 517 mAU/mlであった。多発肝細胞癌と診断し肝動注化学療法を施行する方針としたが、血管造影を施行したところ右肝動脈分岐直後の胃十二指腸動脈から前後の上膵十二指腸動脈が隣接して分岐しており、解剖学的にこれらのコイル塞栓が困難であったためリザーバーカテーテル留置を断念した。このため右肝動脈領域に対してエピルビシン40 mgとリピオドール7 mlの懸濁液によるchemolipiodolizationを施行し、続けてS8の主腫瘍に対して肝動脈塞栓術 (TACE)を行った。治療2ヵ月後の2013年1月、左肝動脈領域に対してchemolipiodolizationを行う目的で血管造影を施行したところ、左右肝動脈領域共に有意な腫瘍濃染像を認めなかった。シスプラチン製剤 (アイエーコール) 25 mgのリピオドール懸濁液を肝両葉に動注したが、術後の腹部CTでは肝両葉共に早期濃染像を認めず新たなリピオドール沈着もみられなかった。腫瘍マーカーはAFP 89.5 ng/ml、PIVKA-II 14 mAU/mlに低下していた。
本症例は肝両葉の多発肝細胞癌例であり、肝右葉の多発腫瘍に対するchemolipiodolizationと主腫瘍に対するTACE後に、治療を施行した肝右葉の多発腫瘍のみならず未治療であった肝左葉の多発腫瘍も消失した。極めて興味ある経過であり文献的考察を加え報告する。
索引用語 肝細胞癌, 自然消褪