セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 079:

腫瘍の肺浸潤により死亡したと考えられた肝臓癌の一例

演者 山下 信行(新小倉病院 肝臓病センター)
共同演者 谷本 博徳(新小倉病院 肝臓病センター), 西浦 三郎(新小倉病院 肝臓病センター), 野村 秀幸(新小倉病院 肝臓病センター)
抄録 症例は60歳代女性.8年前C型慢性肝炎と診断され,ペグインターフェロン・リバビリン併用療法48週を受けたが再燃した.2012年腰痛,腹部膨満感,全身倦怠感,心窩部痛,頸部腫瘤などが次々に出現し,発症約1カ月後に当院を受診した.初回入院時の理学所見では,右頚部に母指頭大ほか数個のリンパ節を触知した.検査成績からはChild-Pughスコア5点であった.腫瘍マーカーはAFP 918 ng/mL,L3分画31.0%,DCP 1184 mAU/mL,CEA・CA19-9はいずれも陰性,sIL-2R 877 U/mLであった.画像検査では肝右葉に最大4.5cmの多発性腫瘍を認めた.腹部傍大動脈に5cm大,その他縦隔・頚部に多発性のリンパ節腫脹が見られた.画像検査では確定診断に至らず,肝の腫瘍2個および頚部リンパ節に対して生検を行った.病理では肝腫瘍は中分化型肝細胞癌と分類不能癌,リンパ節は低分化型腺癌と診断された.全身化学療法の適応と判断し,ソラフェニブ800mgの投与を開始した.投与約1カ月後より全身倦怠感,呼吸困難感が出現し,再入院となった.初診から3カ月後の再入院時には,腫瘍マーカーはAFP 9985 ng/mL,DCP 34294 mAU/mLとさらに上昇していた.血液ガス分析では,酸素5L毎分投与で酸素分圧56 mmHgと低酸素血症を認めた.肺塞栓症を疑い,造影CT検査を行ったが,画像上肺血管には異常を認めなかった.低酸素血症は急速に進行し,入院4日目に死亡した.死亡後,生検針を用いて肺組織を採取したところ,肺血管内に肝細胞癌細胞を認め,肺血管への腫瘍の転移・浸潤が低酸素血症の原因と推測された.Pulmonary tumor thrombotic microangiopathyは,筋性動脈以下の肺動脈への癌細胞浸潤により肺高血圧症や低酸素血症を来たす,予後不良の病態である.本症例では同様な病態が発生し,急速に悪化することで死の転帰をとったと考えられた.
索引用語 肝臓癌, 肺浸潤