セッション情報 シンポジウム2「炎症性腸疾患診療の現状」

タイトル S2-09:

クローン病寛解患者におけるインフリキシマブ投与中止症例の検討

演者 渡邊 龍之(産業医科大学第3内科)
共同演者 久米 恵一郎(産業医科大学第3内科), 芳川 一郎(産業医科大学病院内視鏡部), 原田 大(産業医科大学第3内科)
抄録 【背景】クローン病(CD)治療における究極的な目標はdrug free寛解、すなわち治癒であり、インフリキシマブ(IFX)投与により長期に寛解維持しているクローン病(CD)患者が、IFXを安全に中止出来るかどうかは重要な問題である。STORI試験(Louis E, et al: Gastroenterology.2012;142 63-70)では、1年以上寛解維持しているCD患者でIFXを中止した場合、約50%の患者で再燃しないことが示された。【目的】寛解維持しているクローン病患者でIFXを中止した症例について、再燃の有無、中止後の経過を検討する。【方法】当科でIFXを投与したクローン病患者48例のうち、原則として1年以上寛解を維持しており、且つ粘膜治癒がほぼ得られている(deep remission)クローン病患者のうち、STORI試験の概略を説明の上IFX投与中止を希望した患者6症例を対象とした。IFX投与中止後、毎月問診、血液検査を行い、約3か月後に大腸内視鏡検査を行った。再燃を認めた場合はIFXの再投与を行った。疾患背景、再燃の有無、再燃後IFX再投与後の経過を検討した。【結果】6例中4例は内視鏡的に再燃、悪化を認めIFXを再投与した。2例はCRP陰性と粘膜治癒が持続しており、中止のまま寛解維持していた。IFX中止後も寛解維持中の2例は、発病後3ヶ月でIFXを導入した症例であったのに対し、再燃した4例は28~107ヶ月とIFX導入までの期間が長かった。再燃した4例についてはIFX再投与8週後にはCRPが陰性化し、寛解維持投与を行っている。【結論】IFX投与によりdeep remission を維持している患者で、とくに発病後早期にIFXを導入した患者の中にはIFX離脱可能症例が存在する。また、IFX中止後に再燃しても、再投与することで速やかな寛解導入が得られた。今後症例を積み重ねてさらに検討したい。
索引用語 クローン病, インフリキシマブ