セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研17:

肝膿瘍をきたした出血性胃潰瘍の一例

演者 兼田 浩平(佐賀県立病院好生館消化器内科)
共同演者 田中 雄一郎(佐賀県立病院好生館消化器内科), 冨永 直之(佐賀県立病院好生館消化器内科), 渡邊 聡(佐賀県立病院好生館消化器内科), 緒方 伸一(佐賀県立病院好生館消化器内科), 梶原 哲郎(佐賀)
抄録 症例は69歳男性で、既往歴にC型慢性肝炎、糖尿病性腎症(維持透析中)、閉塞性動脈硬化症などがある。維持透析終了後に吐血したため、当院搬送された。緊急内視鏡にて、胃角大弯に潰瘍を有する過形成性ポリープあり、ソフト凝固にて止血処置を行った。入院5日目より39℃台の発熱と炎症反応の上昇を認めた。CT・腹部エコーにて肝左葉に膿瘍が形成されており、感染巣検索目的に上部消化管内視鏡検査を施行すると、治療した潰瘍面に汚染白苔が確認された。白苔を生検鉗子で回収し、肝膿瘍の穿刺液とともに細菌培養に提出した結果、薬剤感受性まで一致したKlebsiella pneumoniaeがそれぞれから検出された。今回の肝膿瘍の原因は胃潰瘍の創面汚染によるものと判断し、抗生剤投与にて軽快を得た。肝膿瘍の原因として、(1)総胆管結石、膵胆道系の悪性腫瘍に伴う胆道からの逆行性感染、(2)腹腔内感染症や腹腔内進行癌に続発した経門脈的感染、(3)急性胆嚢炎や癌の肝浸潤などの炎症の直接的波及、(4)外傷による肝損傷部に合併する感染、(5)切除不能の膵胆道系悪性腫瘍や肝癌の治療後に発症する感染などがある。本症例は悪性腫瘍などの合併なく、画像上結石の存在も否定的で、肝膿瘍の原因がはっきりしなかった。しかし、肝膿瘍から検出された菌は胃潰瘍の感染白苔からも検出され、薬剤感受性も同じであったことから、両者は同一菌と考えられ、胃潰瘍を門戸として肝膿瘍を形成したと判断する。化膿性肝膿瘍の原因菌はKlebsiella pneumoniaeやE.coliが多いとされる。これらは通性嫌気性菌で、高血糖が存在する場合に嫌気条件下でグルコースを発酵しエネルギー産生をする際に二酸化炭素を発生するため、糖尿病患者に多いとされる。本症例も糖尿病性腎症の既往あり、今回の肝膿瘍形成の一因となった可能性が示唆された。肝膿瘍をきたした出血性胃潰瘍の一例を経験したため、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 肝膿瘍, 胃潰瘍