セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研18:

肝部分切除を要した肝放線菌症の1例

演者 得丸 智子(大分県立病院消化器内科)
共同演者 日野 直之(大分県立病院消化器内科), 阿南 香那子(大分県立病院消化器内科), 秋山 祖久(大分県立病院消化器内科), 高木 崇(大分県立病院消化器内科), 西村 大介(大分県立病院消化器内科), 加藤 有史(大分県立病院消化器内科)
抄録 肝放線菌症は、そのほとんどがグラム陽性嫌気性桿菌Actinomyces israeliiにより惹起される、慢性の化膿性肉芽腫性疾患であり、悪性腫瘍が否定できず肝切除を要することも多い。今回、術前に確定診断しえたにも関わらず、治療に難渋し肝切除を要した肝放線菌症の一例を経験したので報告する。
【症例】64歳、女性。【主訴】右季肋部痛。【既往歴】関節リウマチがありプレドニゾロンとメトトレキサート内服中。【現病歴】平成23年3月に子宮穿孔に対して子宮卵巣摘出術を受けた。同年11月に右季肋部痛のため近医を受診した際に肝腫瘤を指摘され、当科へ紹介入院。【臨床経過】CRP 14mg/dlと上昇し、腹部CTでは肝右葉に多房性の嚢胞性病変、左鼠径部に低吸収域の腫瘤を認め、肝膿瘍と左下腹部膿瘍の診断となった。両者に対して経皮ドレナージを施行し、穿刺液の培養を行った。両者からActinomyces israeliiが検出され、肝放線菌症と診断した。起炎菌同定後からはSBT/ABPC、薬剤感受性結果判明後からはAMPCへ変更し、約6ヶ月間の長期投与を行った。肝膿瘍が残存し、CRPも陰性化しなかったため、ABPCの持続動注を2週間行ったが、効果は得られなかった。その後、肝膿瘍が増大し、右胸水と右胸膜の造影効果が出現したため、肝膿瘍から波及した右胸膜炎と診断した。SBT/ABPC、MINO静注をおこなったが、炎症反応、画像所見ともに完全寛解に至らなかった。長期の内科的治療で完治せず、その後の再燃が予想されたため、肝部分切除を行った。切除後の経過は良好である。
索引用語 肝膿瘍, 放線菌