セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専04:

肛門狭窄、腹壁腫瘤を契機に発見され、急激に病状が進行した胃印環細胞癌の一例。

演者 濱元 ひとみ(独立行政法人国立病院機構 指宿病院)
共同演者 藤田 俊浩(独立行政法人国立病院機構 指宿病院), 重信 秀峰(独立行政法人国立病院機構 指宿病院), 小園 勉(独立行政法人国立病院機構 指宿病院), 木原 研二(独立行政法人国立病院機構 指宿病院), 吉留 伸一(独立行政法人国立病院機構 指宿病院), 坪内 博仁(鹿児島大学病院消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 症例は78歳、男性。1ヶ月前より持続する下痢を主訴に近医を受診した。下部消化管内視鏡でクローン病を疑われ、また腹壁から陰嚢・陰茎・肛門周囲に腫瘤を触知し当院紹介受診した。入院時の腫瘍マーカーはCEA1060 ng/ml, CA19-9 20316 U/mlと著明に高値であり悪性疾患の関与が疑われた。上部消化管内視鏡では幽門輪の変形と軽度の浮腫状狭窄を認めたが、組織検査で悪性所見は認めなかった。下部消化管内視鏡では既知の肛門狭窄と横行結腸から直腸にcobblestone appearance様の所見を認めた。基礎疾患としてクローン病が疑われ、肛門狭窄の進行や腹壁腫瘤の増大があり、肛門より持続的に粘液の漏出を認めたことから痔瘻癌、癌性腹膜炎を疑った。急激に病状が進行しており肛門閉塞や直腸閉塞、尿道閉塞が危惧され、人工肛門造設術、膀胱瘻造設を目的として術前精査を予定した。しかし入院第5病日に嘔吐があり、胃管の挿入で一旦は症状が軽減したものの、その後も嘔気症状が持続した。上部消化管内視鏡を再検したところ幽門輪狭窄の進行を認め、第18病日に内視鏡的に十二指腸ステントを留置した。その後ステント以深に狭窄が出現し、嘔気症状のため水分摂取も困難となった。腹膜播種が強く疑われ、PS低下もあり、外科的加療や化学療法は困難と考えた。第24病日に両側の水腎症が出現し、腎機能が悪化したことから第25病日に右腎に尿管ステントを留置した。その後全身状態が悪化し、第50病日永眠された。御家族の同意を得て、剖検を施行した。基礎疾患としてクローン病が疑われ、肛門狭窄や腹壁腫瘤があり、臨床的には痔瘻癌を疑ったが、剖検で胃印環細胞癌、直腸転移と診断された。急激に病状が進行し、診断に苦慮した一例である。
索引用語 印環細胞癌, 転移