セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専40:

保存的治療が奏功した特発性上腸間膜静脈血栓症の一例

演者 城間 裕子(那覇市立病院)
共同演者 豊見山 良作(那覇市立病院), 西澤 万貴(那覇市立病院), 馬渕 仁志(那覇市立病院), 宮里 賢(那覇市立病院), 仲地 紀哉(那覇市立病院), 島尻 博人(那覇市立病院), 金城 福則(琉球大学光学医療診療部)
抄録 症例は73歳、女性。シャワーを浴びているときに腹痛と嘔吐が突然出現し救急車を要請、当院急病センターに搬送となった。表情は苦悶様で、身体所見で臍下部に圧痛を認めた。血液検査では白血球の軽度上昇を認める以外明らかな異常所見はみられなかった。腹部造影CT検査を施行したところ上腸間膜静脈内の透瞭像と腸管浮腫を認め、上腸間膜静脈血栓症の診断となった。腹膜刺激症状が無いことと、CT画像上明らかな腸管虚血所見を認めないことから手術の適応はないと判断し、ヘパリンによる抗凝固療法を開始した。入院翌日より腹痛は軽減し、入院6日目の腹部造影CT検査で血栓の消失、腸管浮腫の改善が確認できた。入院9日目よりワーファリン内服を開始し、経過は良好で入院18日目に退院となった。
上腸間膜静脈血栓症は比較的まれな疾患であり、外科系緊急入院患者の0.01%、腸間膜血管閉塞性疾患の5~15%と報告されている。基礎疾患に凝固系の異常や膠原病があることが多い。症状は腹痛、嘔気、嘔吐、下痢、下血、感冒症状など非特異的で緩徐に進行することが多く、早期診断が困難である。そのため、鬱血性梗塞により腸管壊死をきたし、開腹手術になる可能性が高い。しかし近年、腹部CT検査の発達により、早期に診断され保存的治療で改善した報告例も散見される。本症例は凝固線溶系検査、自己抗体検査が正常で、血栓症の既往歴や家族歴も無いため、特発性と考えられた。早期診断により保存的治療が奏功した特発性上腸間膜静脈血栓症の一例を経験したので文献的考察を加え報告する。
索引用語 上腸間膜静脈血栓症, 保存的治療