セッション情報 シンポジウム2「炎症性腸疾患診療の現状」

タイトル S2-07:

高齢者潰瘍性大腸炎症例に対する外科治療の検討

演者 佛坂 正幸(潤和会記念病院外科)
共同演者 池田 拓人(宮崎大学腫瘍機能制御外科), 内山 周一郎(都城市郡医師会病院外科), 岩村 威志(潤和会記念病院外科), 千々岩 一男(宮崎大学腫瘍機能制御外科)
抄録 【はじめに】近年,潰瘍性大腸炎(UC)症例において,高齢者の割合が増加しつつある.今回,高齢者UCにおける外科治療について検討した.【対象】2013 年までに手術を施行したUC症例58例のうち,70歳以上の症例6例(男性4例,女性2例,年齢78.3±6.4歳(平均±標準偏差,72~89歳))を対象とし,70歳未満の症例(男性30例,女性20例,年齢45.8±16.0歳(10~68歳))と比較した.統計学的検定はχ検定,Fisher直接検定,t-test により行い,p<0.05を有意とした.【結果】病悩期間は70歳以上例では144±159ヵ月,70歳未満例では 101±94ヵ月であり,有意差はなかった.手術適応は発癌・異型が70歳以上例では4例で,70歳未満例8例と比較して有意に(p<0.05)多かった.ステロイド投与量(プレドニゾロン換算)は術直前投与量,術前総投与量のいずれも70歳以上例(各々7.9±7.1mg,6.2±7.8g)では,70歳未満例(各々13.2±15.8mg,15.2±19.2g)と比べて少なかったが,有意差はなかった.手術は70歳以上例では全例で大腸全摘・腹会陰式直腸切断術を行ったが,70歳未満例では 11例で同手術を,39例で肛門温存手術を選択した.術後合併症は70歳以上例では2例,70歳未満例では23例にみられ,うち重篤な合併症は,70歳以上例では2例(心筋梗塞:1例,敗血症・脳梗塞・サイトメガロウィルス腸炎:1例),70歳未満例では6例(腹壁壊死:2例,敗血症性ショック:1例,回腸嚢血流不全:1例,骨盤内膿瘍:1例,手術を要するイレウス:1例)にみられた.70歳以上例では1例は術後52日目に合併症により,1例は2年8カ月目に敗血症により死亡し,70歳未満例では1例が術後2カ月目に癌死した.【結語】70歳以上の高齢者UC症例では発癌・異型を適応とする症例が多く,ステロイド投与量が少ない傾向にあった.術後はUCに特有な合併症よりも,心筋梗塞,脳梗塞,感染症など高齢者特有の合併症がおこるため,注意を要すると思われた.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 高齢者