抄録 |
症例は71歳男性。発症1か月前の血液検査では肝障害は見られなかった。2012年11月より38度台の発熱および食欲低下が出現した。第9病日の採血で肝障害を認め、第13病日に当院へ紹介入院となる。血液検査にて肝障害(AST 94 IU/L, ALT 518 IU/L, ALP 1068 IU/L, γ-GTP 83 IU/L, PT 47.2%)および好酸球を主体とする白血球増多(白血球数 23150/μL、好酸球数 11110/μL)がみられ、さらに腹部造影CTおよび超音波検査にて肝静脈血栓症を認めた。 肝炎ウィルス・寄生虫・アレルギーの各検査項目に特記事項を認めず、骨髄穿刺でも血液疾患を示唆する所見を認めなかったことより、肝静脈血栓症を伴う特発性好酸球増多症と診断した。臨床症状および好酸球数の推移より病勢のピークは過ぎていると考えてステロイド投与は行わず、血栓症に対してwarfarin potassium 2mg/dayの投与を開始した。凝固線溶系の異常値は速やかに改善し、第26病日には画像上血栓は消失し、肝静脈血流の改善が確認された。第34病日にはwarfarin potassiumの内服を終了した。その後再発はみられていない。肝静脈血栓症をきたした特発性好酸球増多症の一例を経験したので報告をする。好酸球増多症は、合併症として血栓症の頻度が高く、肝静脈血栓症の報告もみられる。このため、病態によっては、ステロイドに加えて抗血栓療法が必要となることもある。 |