セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 086:

胃十二指腸病変の関連が疑われるイレウスを契機に診断に至ったEnteropathy type T-cell lymphomaの1例

演者 岡野 荘(熊本中央病院消化器科)
共同演者 千代永 卓(熊本中央病院消化器科), 松本 浩一(熊本中央病院消化器科), 松下 郁雄(熊本中央病院消化器科), 北岡 光彦(熊本中央病院病理研究科)
抄録 症例は65歳女性、2012年7月に6月ごろより続く腹痛を主訴に当科を受診。初診時の上部消化管内視鏡検査にて胃および十二指腸に原因不明の多発する平坦隆起性病変を認めていた。同病変は生検にて炎症所見のみであった。その後、各種検査施行となったが、診断に至らなかった。9月末に腹痛出現時に受診され、小腸に壁肥厚を認め、同部位を起因としてイレウスを呈していた。精査加療のため入院となりイレウスは加療にてすぐさま改善した。上部消化管内視鏡検査では胃十二指腸病変は徐々に増悪傾向を認め、sIL2Rは2060U/mlと上昇を認めていた。悪性リンパ腫の可能性も考え、胃十二指腸病変を再度生検したが、炎症所見のみであった。経過中、発汗・腫瘍熱と思わる38℃台の発熱およびLDHの上昇も認め、sIL2Rも8540U/mlと急上昇していった。小腸壁肥厚部位精査のため、ダブルバルーン小腸内視鏡施行となった。同病変には到達できなかったが、十二指腸・空腸には多発する潰瘍性病変を認め、生検にて悪性リンパ腫を疑われた。血液内科紹介となり、小腸の腫瘤性病変により通過障害も生じており、診断および加療のため小腸部分切除施行されEnteropathy-type T-cell lymphoma(ETL)type1の診断となった。現在化学療法にて加療中である。消化管に発生するリンパ腫の多くはB細胞性であり、T細胞性は比較的まれである。またETLは消化管穿孔を契機に外科的加療のあと病理組織学的検索にて確定診断に至るケースなどが多く、また予後不良な疾患である。本症例はイレウスを契機に診断に至ったが、至るまでの経過を結果的に観察し、初診時より関連疑われる胃十二指腸病変を認めていた症例である。ETLの早期診断を考えるにあたり、興味深い症例と考えられ若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 Enteropathy-type Tcell lymphoma, イレウス