セッション情報 | 専修医発表(卒後3-5年迄) |
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タイトル | 専48:高分化型肝細胞癌との鑑別が困難であった限局性脂肪沈着の1例 |
演者 | 國本 英雄(福岡大学消化器内科) |
共同演者 | 森原 大輔(福岡大学消化器内科), 土屋 直壮(福岡大学消化器内科), 四本 かおる(福岡大学消化器内科), 櫻井 邦俊(福岡大学消化器内科), 田中 崇(福岡大学消化器内科), 平野 玄竜(福岡大学消化器内科), 横山 圭二(福岡大学消化器内科), 高良 真一(福岡大学放射線科), 竹山 康章(福岡大学消化器内科), 入江 真(福岡大学消化器内科), 岩田 郁(福岡大学消化器内科), 釈迦堂 敏(福岡大学消化器内科), 早田 哲郎(福岡大学消化器内科), 吉満 研吾(福岡大学放射線科), 向坂 彰太郎(福岡大学消化器内科) |
抄録 | 症例は34歳男性。2007年、C型肝硬変に対してIFN療法を施行されSVRとなった。以後、定期的にfollow upされていた。2012年5月、胆石症に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行された。2012年7月、腹部エコーで肝S4に径13mmの高エコー病変を指摘され、腹部造影CT、EOB-MRIで脂肪を含有した高分化型肝細胞癌が疑われた。精査加療目的に当科入院となった。肝予備能はChild-Pugh 5点、ICG15分値 12.2%であり、肝切除術の適応と考え、術前検査として血管造影検査を行った。同病変は、CTAPで肝左葉内側区(S4)を主体に径40mmの門脈血流低下域として認められた。CT、MRIで描出される病変と大きさが異なり、門脈外からの血流いわゆる静脈還流異常が疑われた。また、CTHA早期相では明らかな造影効果は認めなかったが、後期相で不均一に濃染され、典型的な高分化型肝癌の所見とは異なっていた。脂肪を含有した腫瘍であることと腫瘍の存在部位から、限局性脂肪沈着も鑑別として考えられ、門脈以外の肝流入血管(Third inflow)の検索目的に胃十二指腸動脈造影を行った。結果、門脈と併走する膵幽門十二指腸静脈を認め、その後に肝実質(病変部)が造影される所見を認めた。さらに、胃十二指腸動脈からのCTAの評価で膵幽門十二指腸静脈がCTAP上の血流欠損部に直接流入していることが確認された。以上より、高分化型肝癌は完全に否定出来ないが、膵幽門十二指腸静脈による静脈還流異常によって出現した限局性脂肪沈着と判断し、肝切除は行わず経過観察とした。その後のMRIでは病変の増大は認めていない。本症例は胆嚢摘出術を施行され、膵頭部の静脈血が門脈本幹を介さず膵幽門十二指腸静脈を介して直接肝実質に還流する経路が生じたと考えられる。膵頭部からの静脈血はインスリンや栄養成分が多く含まれており、限局性脂肪沈着を生じたと推測された。背景肝は肝硬変状態であり、脂肪成分を多く含む早期肝細胞癌との鑑別が困難であった。本症例のように、限局性脂肪沈着の好発部位に、脂肪成分を多く含む腫瘍を見たときは、血管造影検査で血流の状態を確認する必要があると考えられた。 |
索引用語 | 限局性脂肪沈着, 静脈還流異常 |