セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専49:

肝細胞癌の腹壁転移の1例

演者 松下 寛(熊本大学大学院 消化器内科学)
共同演者 川崎 剛(熊本大学大学院 消化器内科学), 石貫 敬子(熊本大学大学院 消化器内科学), 泉 和寛(熊本大学大学院 消化器内科学), 溝部  典生(熊本大学大学院 消化器内科学), 吉丸 洋子(熊本大学大学院 消化器内科学), 福林 光太郎(熊本大学大学院 消化器内科学), 立山 雅邦(熊本大学大学院 消化器内科学), 渡邊 丈久(熊本大学大学院 消化器内科学), 糸山 明莉(熊本大学大学院 消化器外科学), 藏本 一崇(熊本大学大学院 消化器外科学), 今井 克憲(熊本大学大学院 消化器外科学), 田中 基彦(熊本大学大学院 消化器内科学), 別府 透(熊本大学大学院 消化器外科学), 馬場 秀夫(熊本大学大学院 消化器外科学), 佐々木  裕(熊本大学大学院 消化器内科学)
抄録  症例は65歳女性。B型慢性肝炎に対して当院に定期通院中であった。昭和57年に食道静脈瘤に対してHassab手術を施行され、平成4年にはS4の初発の肝細胞癌に対して経カテーテル的肝動脈化学塞栓術を施行された。平成20年にはS8の16mm大の単発の再発肝細胞癌に対して経カテーテル肝動脈化学塞栓術と、右肋間および正中からアプローチでラジオ波凝固療法を施行された。今回、腹壁内に腫瘤性病変を指摘され増大傾向にあることから精査目的で入院となった。心窩部には20mm大の腫瘤を触知したが、以前のHassab手術の術後の創とは位置はずれていた。病変は超音波検査では腹壁内に境界明瞭な20mm大の低エコー腫瘤として描出され、造影CT検査では造影早期に濃染された。肝内には明らかな肝細胞癌再発の所見は認めず、他の部位には転移を疑う所見は認められなかった。PET-CTでは腹壁の病変を含め明らかな異常集積は認められず、また血液検査でAFP、PIVKA-IIは正常範囲内であった。 増大傾向のある腹壁内の腫瘤性病変であり造影CTなどで濃染することから肝細胞癌の腹壁転移も考えられたために、診断目的で腹壁内腫瘤の摘出術を行った。その際、悪性の可能性も考えられたために10mmのマージンを確保しながら腫瘤を切除した。腫瘤は腹壁内に限局しており、病理診断にて肝細胞癌の腹壁転移の診断となった。 肝細胞癌の腹壁転移の経路としては肝細胞癌の直接浸潤、経皮的治療後の穿刺部への播種、手術の瘢痕部への播種、血行性転移などが考えられている。本症例では肝内に肝細胞癌の所見は認められず、過去に行った経皮的処置時の穿刺経路に5年を経過して転移巣のみを認めた。今回、我々は肝細胞癌の腹壁転移の症例を経験したので若干の文献的考察をふまえて報告する。
索引用語 肝細胞癌, 転移