セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専61:

選選択的動脈内カルシウム負荷試験により十二指腸ガストリノーマと診断した難治性十二指腸潰瘍の1例

演者 塩田 純也(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 竹島 史直(長崎大学病院消化器内科), 南 ひとみ(長崎大学病院消化器内科), 大仁田 賢(長崎大学病院消化器内科), 阿保 貴章(長崎大学病院第一外科), 阿部 邦子(長崎大学病院病理部), 磯本 一(長崎大学病院消化器内科), 林 徳真吉(長崎大学病院病理部), 七島 篤志(長崎大学病院第一外科), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 症例は72歳男性、タール便と貧血を主訴に前医を受診した。上部消化管内視鏡検査にて多発十二指腸潰瘍を認め、絶食・輸液管理とされたが、経口摂取を再開しては再出血を繰り返す難治性であったため、精査加療目的に当院紹介となった。当院入院後も十二指腸に露出血管を伴う多発性類円形潰瘍を認め、絶食・中心静脈栄養・PPI投与にて管理を行った。難治性多発潰瘍の鑑別としてガストリノーマも疑ったところ、血中ガストリン値が1227pg/ml(正常:30-150pg/ml)と著明に上昇していた。さらに造影CTでは十二指腸下行脚に早期濃染を有する8mm大の腫瘤影を認めた。通常内視鏡観察や超音波内視鏡では同腫瘤影は確認できなかった。確定診断するために、選択的動脈内カルシウム負荷試験を施行した結果、胃十二指腸動脈へのカルシウム注入にてガストリン値の急激な反応性上昇を認め、十二指腸ガストリノーマと診断し、十二指腸外科的切除(腹腔鏡下十二指腸部分切除術)を施行した。しかし術中に同腫瘍は同定困難であったため、十二指腸下行脚部分切除術を行ったが、病理所見では切除範囲内に明らかな腫瘍性病変は認めず、ガストリン値の低下もみられなかった。治癒切除に至らなかったと判断し、オクトレオチドの投与を行い、その後は出血なく経過していた。しかし、術後約1年後に貧血の進行とタール便が出現し、上部内視鏡にて多発潰瘍を認めたため、膵頭十二指腸切除術を行った。術後病理標本で十二指腸粘膜下層に8mm大の類円形腫瘤を認め、ガストリン染色陽性よりガストリノーマと判断した。術後は速やかにガストリン値は低下した。本邦では十二指腸ガストリノーマの報告は少なく、術前の局在診断が困難な例も多い。我々は難治性十二指腸潰瘍に対して選択的カルシウム負荷試験を行い術前診断した1例を経験したため、若干の文献学的考察を交えて報告する。
索引用語 ガストリノーマ, 選択的動脈内カルシウム負荷試験