セッション情報 シンポジウム1「代謝性肝疾患の現状と問題点」

タイトル S1-07:

肝不全症例における銅代謝異常

演者 千手 倫夫(産業医科大学第3内科学)
共同演者 本間 雄一(産業医科大学若松病院消化器内科), 柴田 道彦(産業医科大学第3内科学), 日浦 政明(産業医科大学第3内科学), 松橋 亨(産業医科大学第3内科学), 鬼塚 良(産業医科大学第3内科学), 阿部 慎太郎(産業医科大学第3内科学), 原田 大(産業医科大学第3内科学)
抄録 【背景】ウイルソン病はウイルソン病遺伝子(ATP7B)の異常に伴う先天性銅代謝異常症であり、セルロプラスミン低値と尿中銅排泄増加が認められ、Keyser-Fleischer輪の有無、肝銅含有量測定ならびに遺伝子解析でその診断がなされる。しかし、臨床現場においては肝生検が困難な場面に遭遇することも多く、また遺伝子解析には時間を要するため、通常の銅代謝関連検査のみでは診断が困難な場合もあり、ウイルソン病の診断には慎重な判断が求められる。【目的】日常診療における肝不全症例では、肝細胞でのセルロプラスミン合成能低下による血清セルロプラスミン低値と肝細胞からの銅逸脱による尿中銅高値となることが考えられ、その場合にはウイルソン病との鑑別に苦慮することも予想される。そこで、肝不全症例におけるセルロプラスミンおよび尿中銅の傾向を検討し、ウイルソン病のより正確な診断について考察したい。【方法】2009年6月から2013年2月までに当科を受診した未治療のウイルソン病患者3例ならびに肝不全症例(PT% 50%以下を基準)のうち検索可能であった84例について血清セルロプラスミン、尿中銅、尿中銅/尿中クレアチニン比を測定し、その傾向について検討した。【結果】肝不全症例では、急性肝障害24例、慢性肝障害60例で、平均年齢66.0歳、平均セルロプラスミ値30.6 mg/dl(正常値:23~40 mg/dl)、尿中銅排泄比 0.178(中央値)(正常値:0.2以下)であった。3例においては、通常の銅代謝関連検査のみではウイルソン病と酷似する検査結果が得られ、肝不全症例のうち7.6%はウイルソン病と類似する銅代謝異常を来した。【結論】肝不全症例においては慎重な病態把握に努める必要があることは言うまでもなく、特にウイルソン病を疑った場合には、より慎重な判断が求められると考えられた。
索引用語 ウイルソン病, 銅代謝