セッション情報 特別企画「若手臨床医による消化器疾患の病態ならびに治療に関する基礎研究」

タイトル SP-06:

培養肝癌細胞におけるsorafenibとプロテアソーム阻害薬の影響

演者 本間 雄一(産業医科大学第3内科学)
共同演者 原田 大(産業医科大学第3内科学)
抄録 【目的】切除不能肝細胞癌に対するsorafenibの有効性が確認されており、さらに他の分子標的薬であるbortezomibなどのプロテアソーム阻害薬(PI)も近年注目されている。Sorafenibは、血管新生を阻害し抗腫瘍効果を発揮することが報告されている。しかし、肝癌細胞に対する直接作用など詳細な機序については不明な点も多く、その解明が重要である。PIは、肝細胞内に異常な蛋白を蓄積させ、小胞体ストレスやアポトーシスを誘導する。また肝細胞の中間径線維を構成するケラチンは、細胞ストレスからの保護に重要な働きを有しており、その際はケラチンのリン酸化が重要である。今回、培養肝細胞を用いてsorafenibやPIの相互作用について検討した。【方法】肝癌細胞株(Huh7、Hep3B)、不死化ヒト肝細胞株(OUMS29)を、sorafenib ならびにPI(epoxomicin、ALLN)で処理した。異常蛋白の蓄積はユビキチン、小胞体ストレスはCHOP、XBP-1、eIF2α、アポトーシスはcaspase3、PARPのウエスタンブロットにて検討した。さらにネクローシスをpropidium iodideにて検討した。ケラチンのリン酸化はリン酸化ケラチン特異抗体で検討した。【成績】細胞死は、PI単独でアポトーシスが誘導され、sorafenibの併用によりアポトーシスに加えネクローシスが増加した。PI単独で異常蛋白の蓄積や小胞体ストレスが誘導され、unfolded protein response(UPR)の誘導を認めた。SorafenibとPIの併用では、蛋白のユビキチン化やUPRが抑制された。またsorafenibはケラチンのリン酸化を阻害し、肝細胞内のinclusion bodyの形成を抑制した。【結論】Sorafenibは、PIによる蛋白のユビキチン化やUPRを抑制し、さらにケラチンのリン酸化を阻害し、相乗的に抗腫瘍効果を発揮する可能性が示された。
索引用語 sorafenib, プロテアソーム阻害薬