セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 075:

北九州市若松区で同時期に発症した感染経路不明のE型急性肝炎の2例

演者 本間 雄一(産業医科大学若松病院消化器内科DELIMITER産業医科大学第3内科学)
共同演者 田原 章成(産業医科大学若松病院消化器内科), 喜田 栄作(産業医科大学若松病院消化器内科), 松岡 英彦(産業医科大学若松病院消化器内科), 宿輪 和孝(産業医科大学若松病院消化器内科), 原田 大(産業医科大学第3内科学)
抄録 今回我々は、北九州市に土着したHEV株によると思われる、E型急性肝炎の2例を経験したので、文献的考察を踏まえ報告する。症例はいずれも70歳代の男性。2012年8月に肝機能障害を認めたため当科紹介となった。2例とも北九州市若松区在住であるが、互いに交流はなく、イノシシやシカなど野生動物の生肉の摂取歴や海外渡航歴は認めなかった。IgA-HEV抗体陽性、HEV RNA陽性でありE型急性肝炎と診断した。トランスアミナーゼ高値で黄疸を認めたが、肝炎は一過性であり保存的加療のみで軽快した。病歴から感染経路は不明であったが、HEVの遺伝子解析で両者ともgenotype 3であり、ORF1領域の遺伝子配列はほぼ一致していた。E型肝炎は人獣共通感染症であり、従来我が国では輸入感染症と考えられていたが、国内感染例が日本各地で報告されるようになり、本邦における国内発症型E型肝炎の実態が明らかになりつつある。E型肝炎の報告例は東日本に多い傾向があり、九州地方では比較的稀と考えられるが、今回の2例は北九州市に土着したHEV株による感染と考えられた。流行地域への渡航歴や野生動物の生食などの病歴から本症を疑うことは比較的容易であるが、国内感染例の半数以上は感染経路が不明との報告もあり、原因不明の急性肝炎を認めた場合には、本症を念頭に置く必要があると思われた。
索引用語 E型急性肝炎, 北九州市