セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 081:

十二指腸への直接浸潤による消化管出血に対して放射線治療が奏功した肝細胞癌の一例

演者 大穂 有恒(製鉄記念八幡病院肝臓内科)
共同演者 山崎 晃裕(製鉄記念八幡病院肝臓内科), 山下 尚毅(製鉄記念八幡病院肝臓内科), 梶原 英二(製鉄記念八幡病院肝臓内科), 森岡 丈明(戸畑共立病院がん治療センター)
抄録 【症例】73歳、女性。2型糖尿病と高血圧症で近医通院中の2010年9月に肝酵素上昇、腹部エコーで肝腫瘍を指摘され当院受診。造影CTにて肝内に動脈相で濃染、平衡相で低吸収を呈する病変が散在しており肝細胞癌の診断となった。2010年10月よりTACE, Lp-TAIを5回施行した後、2012年1月に肝門部の腫瘍増大による閉塞性黄疸に対して、両肝管へのチューブステント留置ならびに放射線照射を行った。2012年4月に肝動注リザーバー留置、low dose FP変法による肝動注化学療法を開始し、合計7クール施行した。経過中に肝S1/6より突出し十二指腸背側を圧排する低吸収域の出現を認め、2012年11月に加療目的で入院となった。黄疸なし、腹部平坦、軟、肝脾触知せず、圧痛なし。Hb 6.6mg/ml、血小板数 14.6×104/ul、T.Bil 0.6 mg/dl、Alb 2.8 g/dl、AST 30 IU/l、ALT 13 IU/l、ALP 352 IU/l、γ-GTP 69 IU/l、PT 70.5 %、AFP 5116.4 ng/dl(L3 84.9 %)、PIVKA-II 4569 MAU/ml。入院時に貧血の進行を認めた。腹部血管造影を施行し上腸間膜動脈からの造影で十二指腸周囲に腫瘍濃染を認めたが、活動性出血の所見は認めず、腫瘍への選択的なTACEも困難であった。上部消化管内視鏡にて十二指腸球後部に凝血塊の付着した不整形潰瘍性病変を認め、肝細胞癌の十二指腸への直接浸潤、穿破による消化管出血が貧血進行の原因と考えられた。治療方針の決定に難渋したが、十二指腸背側の腫瘍への多分割放射線照射(1回1Gy,1日2回,総線量40Gy)を施行した。貧血に対してはMAP合計8単位の輸血を行ったが、放射線治療開始後に貧血の進行は緩徐となり、治療期間終了後に退院となった。治療後のCTにて十二指腸背側の腫瘍は著明な縮小を認めた。上部消化管内視鏡では深い潰瘍が残存していたものの明らかに縮小し、出血所見も認めなかった。
【考察】十二指腸への直接浸潤、穿破により消化管出血を来した肝細胞癌に対して、放射線照射が奏功した症例である。動脈塞栓術や外科手術が困難な場合、放射線照射も治療の選択肢となり得ることが示された。文献的な考察を加えて報告する。
索引用語 肝細胞癌, 十二指腸浸潤