セッション情報 シンポジウム1「代謝性肝疾患の現状と問題点」

タイトル S1-03:

非アルコール性脂肪性肝疾患に対する分岐鎖アミノ酸製剤の有用性の検討

演者 馬渡 誠一(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 宇都 浩文(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 呉 建(済世会川内病院), 小田 耕平(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 椨 一晃(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 大野 香織(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 大重 彰彦(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 今中 大(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 熊谷 公太郎(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 玉井 努(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 森内 昭博(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 桶谷 眞(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 井戸 章雄(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学大学院 消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症や進展には肥満やインスリン抵抗性が関与している。分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤は、肝硬変患者の低アルブミン血症の改善に有効であるが、ダイエットプログラムに参加した被験者のインスリン抵抗性を改善する効果も報告されている。しかし、NAFLDに対するBCAA製剤の効果は十分明らかになっていない。本研究は、NAFLDに対するBCAA製剤の有用性について検討することを目的とした。
【対象と方法】腹部超音波検査で脂肪肝と診断され、インスリン抵抗性(HOMA-IR≧2)を呈し、ALTまたはγGTPが正常値上限を超え、ウイルス性肝炎や肝細胞癌の合併がないNAFLD患者10名(男性8名、女性2名)を対象とした。BCAA顆粒製剤は1日3包、12週間投与した。
【結果】対象患者の年齢、BMIの平均値(範囲)はそれぞれ44.9 (24-70)歳、29.8(23.8-39.8)kg/m2であった。BCAA投与前と比較し、4週目にLDHと遊離脂肪酸の有意な低下(それぞれP=0.037、0.027)、BUNの有意な上昇(P=0.027)を認め、8週目にLDH、フェリチン、酸化型/還元型アルブミン比は有意に低下(それぞれP=0.012、0.012、0.045)、BUNは有意に上昇(P=0.022)した。12週目(投与終了時)にALP、LDH、血清フェリチン値の有意な低下(それぞれP=0.006、0.003、0.029)を認め、グリコアルブミン値は低下傾向を示した。BMI、Hb、ALT、γGTP、HOMA-IR、高感度CRPは治療前後で有意差がなかった。
【結論】12週間のBCAA製剤投与ではトランスアミナーゼの改善は得られなかったが、経過中に酸化型/還元型アルブミン比やフェリチン値は低下した。これらのことから、BCAA製剤は貯蔵鉄を減少させることにより、酸化ストレスを軽減させ、NAFLDの病態改善に寄与する可能性があると考えられた。
索引用語 NAFLD, BCAA