セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研10:

発熱、腹痛を主訴とし、診断治療に難渋した原発性腸結核の1例

演者 楢原 哲史(済生会熊本病院外科センター)
共同演者 藤木 義敬(済生会熊本病院外科センター), 大内 繭子(済生会熊本病院外科センター), 東 孝暁(済生会熊本病院外科センター), 井上 光弘(済生会熊本病院外科センター), 田中 秀幸(済生会熊本病院外科センター), 杉山 眞一(済生会熊本病院外科センター), 井上 耕太郎(済生会熊本病院外科センター), 高森 啓史(済生会熊本病院外科センター), 今村 治男(済生会熊本病院消化器病センター), 神尾 多喜浩(済生会熊本病院病理)
抄録 症例は84歳、女性。平成24年7月より下腹部痛が出現し、前医を受診。CTで小腸の膿瘍形成を認め当院紹介受診し、精査にて小腸微小穿通が疑われ、抗生剤による保存的加療により軽快退院した。しかしながら、8月には発熱にて救急外来受診した。腹部所見はなかったが、CTで腸間膜内に微量のairを認めた。小腸炎、小腸腫瘍が疑われたが症状軽快したため外来精査のため退院した。9月には再度発熱を認め、緊急入院した。その際、病変は造影CTにて、骨盤内小腸に全周性の著明な壁肥厚を認め、周囲リンパ節や小腸間膜リンパ節に最大のもので径15mm大までの類円形の腫大を多数認めた。また、骨盤内小腸壁に接して膿瘍を疑う部分と小腸間膜に気泡を認めた。小腸透視では、CT指摘部位である骨盤内回腸に約4cmの狭窄を認め、中央にバリウムの貯留を認め、深い潰瘍形成か膿瘍形成部位が疑われた。狭窄は不整であり、立ち上がりは周堤様の変化乏しく、浮腫等の炎症性変化は認めなかった。CF、GFにおいては明らかな病変は指摘出来なかった。IL-2軽度高値で、悪性リンパ腫や炎症性腸疾患などを念頭に置いたが、全身状態の改善を優先し小腸部分切除術を施行した。術後病理学的に腸結核と診断された。術前の咽頭液、術後のドレーン、便からは、抗酸菌の検出はされず、呼吸器病変を伴わない原発性腸結核の診断となった。低栄養状態を伴う高齢者の腹部腫瘍においては、肺外結核症を考慮することが必要と思われた。この場合診断が困難となることが多く、本症例のように膿瘍、穿通を伴う原発性腸結核の報告は稀である。今回、診断、治療に難渋した腸結核の1例を経験したので、これに文献的考察を加えて報告する。
索引用語 腸結核, 小腸腫瘍