セッション情報 シンポジウム2「炎症性腸疾患診療の現状」

タイトル S2-03:

潰瘍性大腸炎におけるタクロリムスの有用性の検討

演者 福田 浩子(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 竹島 史直(長崎大学病院消化器内科), 卜部 繁俊(長崎大学病院消化器内科), 庄司 寛之(長崎大学病院消化器内科), 橋口 慶一(長崎大学病院消化器内科), 南 ひとみ(長崎大学病院消化器内科), 松島 加代子(長崎大学病院消化器内科), 赤澤 祐子(長崎大学病院消化器内科), 山口 直之(長崎大学病院消化器内科), 大仁田 賢(長崎大学病院消化器内科), 磯本 一(長崎大学病院消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 【はじめに】タクロリムスは難治性潰瘍性大腸炎(UC)に対する新たな治療法として寛解導入効果など有効性が実証され、2009年に適応が追加された。しかし、その使用に際しては血中トラフ濃度コントロールが必要であり、課題点も存在する。今回我々は難治性UCに対するタクロリムスの治療効果について、血中トラフ濃度をふまえ検討した。
【対象】2010年3月から2013年3月にタクロリムスを投与された重症および難治性UC患者17例(男性11例、女性6例)。
【方法】有効性の評価指標としてclinical activity index(CAI)スコアを用いて治療前後で有効率、寛解率を比較検討した。また、トラフ値と治療効果についての検討を行った。
【結果】
 病型は全大腸炎型12例、左側大腸炎型5例、直腸炎型は0例であった。重症度は軽症0例、中等症7例、重症10例であった。全体のCAI中央値はタクロリムス投与前13.2、治療開始1週後10.1、2週後7.6、4週後4.3と早期から有意に低下を認め、投与8週後の寛解率は64.7%(11/17)、改善も含めた有効率は76.5%(13/17)であった。
 また、タクロリムスの血中トラフ濃度は4日目に平均10.1ng/mlであり、68.8%の症例で7日以内に至適トラフ値に到達した。CAIスコアは、7日以内に至適トラフ値に到達した症例では1週後に平均9.3、4週後は平均4.6であり、一方7日以上を要した症例ではそれぞれ平均12.0、3.3であった。よって早期の至適トラフ値到達は早期の症状改善に有効であると考えられた。
 副作用としては4例(23.5%)に低マグネシウム血症を認めたが、いずれも水酸化マグネシウム製剤の投与にて改善を認めた。
【おわりに】タクロリムスは難治性UCの寛解導入・維持において有効な薬剤であるが、安定化するまでコントロールが必要であり、症例の選択や導入時期、投与期間を考慮し慎重に適応症例を検討し、厳重な管理のうえでの投与が必要であると考えられた。
索引用語 潰瘍性大腸炎, タクロリムス