セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 076:

当科で経験した小児B型急性肝炎の1例

演者 今中 大(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 森内 昭博(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 大野 香織(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 椨 一晃(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 大重 彰彦(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 小田 耕平(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 熊谷 公太郎(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 馬渡 誠一(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 玉井 努(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 宇都 浩文(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 桶谷 眞(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 井戸 章雄(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【はじめに】1985年に開始された「B型肝炎母子感染防止事業」によって、小児のHBVキャリア率は0.024%と、事業開始前と比較して1/10以下となっている。しかし、現状でもHBVキャリアから創部を介しての感染など、小児におけるB型急性肝炎の報告が散見され、ユニバーサルワクチンの導入が望まれている。今回我々は、家族外からの水平感染と考えられる小児B型急性肝炎の1例を経験したため報告する。【症例】9歳、女児。生来健康で、両親と3人暮らしであった。上腹部痛及び嘔吐、発熱が出現し、近医小児科で感冒として加療されていたが、その後家人に黄疸を指摘されるようになった。黄疸がさらに増強したため、3月21日当院小児外科受診し、急性肝障害の診断となり同科入院となった。HBs抗原陽性でB型肝炎と診断され肝障害が遷延するため、当科転科となった。HBe抗原陽性、HBe抗体陽性、HBc抗体8.45と上昇を認めたが、IgM-HBc抗体が20.9と上昇を認めており、B型急性肝炎と診断した。HBV-DNA 5.2 LC/ml、ゲノタイプはCであった。経過中、肝胆道系酵素及びビリルビン値は改善傾向であったため、治療介入は行わずに経過観察とした。その後、HBs抗原及びHBe抗原は陰性化し、HBV-DNA<2.1未満となり、良好に経過した。【考察】HBVの感染経路に関して、本人は両親と3人暮らしで、両親共にHBs抗原及びHBc抗体は陰性であり、両親からの感染は否定的であった。水平感染と考えられたが、過去に観血的処置を受けた既往や明らかな血液曝露歴はなかった。しかし、本症例より数年前に当科で入院加療を行った小児B型急性肝炎症例と同級生であり、同じクラスであったことから、両症例に感染したHBVの塩基配列を解析したところ、両者の塩基配列が一完全致し、同一株のHBVが感染したと考えられた。両症例の環境にHBVの媒介者の存在が疑われた。地域における小児を含めたHBVスクリーニング検査などの対策が必要と考えられる。また、HBVユニバーサルワクチンの導入が望まれる。【結語】今回、家族以外からの水平感染と考えられた小児B型急性肝炎の1例を経験した。
索引用語 B型急性肝炎, 小児