セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専25:

小腸-小腸瘻を形成した虚血性小腸炎の一例

演者 井原 勇太郎(九州大学大学院病態機能内科学)
共同演者 前畠 裕司(九州大学大学院病態機能内科学), 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学), 貫 陽一郎(九州大学大学院病態機能内科学), 一瀬 理沙(同 形態機能病理学), 熊谷 好晃(同 形態機能病理学), 平橋 美奈子(同 形態機能病理学), 植木 隆(同 臨床腫瘍外科), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 北園 孝成(九州大学大学院病態機能内科学)
抄録 症例は80歳、男性。他院で慢性心房細動に対して抗血小板薬が投与されていた。平成24年10月31日夕方より右下腹部の鈍痛が出現し、11月1日に他院へ入院。腹部造影CTで上腸管膜動脈塞栓症と診断され、翌日当院へ救急搬送となった。当院で再検した腹部造影CTでは右結腸・中結腸動脈ならびに空腸動脈の近位空腸枝分岐部より遠位側で動脈閉塞を認めたが、さらに末梢側では側副血行路により腸管の血流は保たれていた。腹膜刺激症状なく、CTでは腸管壊死の所見を認めないことから緊急手術の必要性は低いと考え、ヘパリン持続静注を開始した。また、上腸間膜動脈塞栓症による麻痺性イレウスを併発したため、11月5日にイレウス管を挿入した。以後、症状増悪なく経過したが、11月13日のイレウス管造影検査では、回腸は約50cmにわたり浮腫状で管状狭窄を呈していた。なお、同日の腹部造影CTでは動脈塞栓は残存していた。11月16日に再度イレウス管造影検査を行ったところ、高度の管状狭窄に加え小腸-小腸瘻を認めた。保存的加療後も高度炎症所見は残存しており、回腸の高度狭窄ならびに内瘻の改善は見込めないと判断し、11月30日に腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した。術中所見では、回盲弁より口側20cmの部位から120cmにわたり回腸は連続性に肥厚しており、同部を切除した。切除標本の肉眼所見では、広範にわたる粘膜脱落、縦走潰瘍を認め、小腸-小腸瘻が確認された。病理組織学的所見では粘膜下層におよぶ慢性炎症細胞浸潤と毛細血管の充血を認め、虚血性小腸炎に合致する所見であった。術後経過は良好で12月27日に退院となった。本例は基礎疾患に慢性心房細動を有しており、腹部症状の経過から心原性塞栓を契機に急性発症した虚血性小腸炎を第一に考えたが、側副血行路が発達していたことから陳旧性塞栓に伴う慢性虚血の像を捉えていた可能性も推測された。さらに、内瘻形成を伴った虚血性小腸炎は極めて稀と考えたため、今回報告する。
索引用語 小腸-小腸瘻, 虚血