セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専16:

術中内視鏡による空気塞栓症の1例

演者 内原 智幸(熊本大学消化器外科)
共同演者 吉田 直矢(熊本大学消化器外科), 渡邊 雅之(熊本大学消化器外科), 馬場 祥史(熊本大学消化器外科), 日吉 幸晴(熊本大学消化器外科), 石本 崇胤(熊本大学消化器外科), 馬場 秀夫(熊本大学消化器外科)
抄録 【症例】59歳男性。【既往歴】22歳時に自殺企図で苛性ソーダを服用し、腐食性食道炎による食道狭窄のため、内視鏡的拡張術を繰り返されていた。【現病歴】2012年6月に食道胃管吻合によるバイパス術を施行し経過をみていたが、残胃瘻の閉鎖を希望されたため、残胃空腸バイパスを行うこととなった。2013年2月の入院時の採血でCEA 7.6、SCC 3.9と腫瘍マーカーの上昇を認め、またPET-CTで遺残食道の腫瘍性病変を指摘されたため、バイパス手術中に残胃から逆行性にGFを行い、生検を行う方針とした。【経過】全身麻酔下に手術を開始した。術中にGFで食道内腔を観察し始めた直後に、ECG(第2誘導)のST低下とHR20の完全AVBが出現した。胸骨圧迫とmedicationにより20分後にECGは正常化したが、手術室で行った緊急CTで奇静脈、肺動脈にエア像を認め、空気塞栓が疑われた。手術を中断し麻酔から覚醒させたところ、左片麻痺を認めた。発症後4時間の頭部MRIでは、明らかな梗塞像を認めなかった。ICUに入室後、ニトロール、ラジカット等で治療を行った。術直後には全身性痙攣、Todd麻痺の出現を認めたが、術後4日目に麻痺が消失し、後遺症なく退院となった。【考察】GFによる空気塞栓は稀な合併症である。今回は盲端となっている食道に送気を行ったことと、盲端の腫瘍が脈管に浸潤していた疑いがあり、そこからエアの血管内移行が起こり、空気塞栓症を発症したと考えられた。空気塞栓後の在院死は16%と報告されており、内視鏡検査時には起こりうる合併症として念頭に置いておくべきである。とくに今回のような盲端になっている臓器に内視鏡を行う場合には、注意が必要である。
索引用語 空気塞栓, 内視鏡