共同演者 |
内山 大治(社会医療法人共愛会戸畑共立病院放射線科), 久原 研二郎(社会医療法人共愛会戸畑共立病院消化器病センター), 岸 昌廣(社会医療法人共愛会戸畑共立病院消化器病センター), 寺部 寛哉(社会医療法人共愛会戸畑共立病院消化器病センター), 酒見 亮介(社会医療法人共愛会戸畑共立病院消化器病センター), 石原 裕士(社会医療法人共愛会戸畑共立病院消化器病センター), 松垣 諭(社会医療法人共愛会戸畑共立病院消化器病センター), 森光 洋介(社会医療法人共愛会戸畑共立病院病理部), 宗 祐人(社会医療法人共愛会戸畑共立病院消化器病センター), 久保 保彦(社会医療法人共愛会戸畑共立病院消化器病センター), 下河辺 正行(社会医療法人共愛会戸畑共立病院消化器病センター), 佐田 道夫(久留米大学病院内科学講座消化器部門) |
抄録 |
【背景】肝血管肉腫はまれな腫瘍だが, 肝原発非上皮性悪性腫瘍の中では1.8%と最も多く, 60~70歳代の男性発症が多いとされる. 本腫瘍の誘因にはトロトラストなど挙がるが原因不明の症例が多い.症状は非特異的で, 発見時には進行例が多く, 急速に進展し極めて予後不良である. 可及的速やかに診断することは治療方針決定や予後推測に肝要である.今回我々は肝腫瘍生検で診断しえた肝血管肉腫の1例を経験したので報告する. 【症例】75歳男性【主訴】食欲不振, 下腿浮腫【既往歴】2型糖尿病、高血圧【生活歴】塩化ビニル, トロトラスト, 砒素の暴露歴はなし.【現病歴】糖尿病にて経過観察中, 肝機能異常を認めた. 単純CT及びMRCPにて総胆管結石, 胆石と同時に多発性肝腫瘍を認めた.その後, 腹部膨満感, 下肢浮腫及び陰嚢水腫が出現, 腹部造影CT施行となる. 肝両葉に多発性多血性肝腫瘍を認め, 精査加療目的に内科入院となる.【検査所見】WBC 4790/μl, Hb 12.8g/dl, Ht 36%, PLT 9.0×104/μl Alb 2.5g/dl, T.Bil 2.3mg/dl, AST 66U/l, ALT 38U/l, ALP 800U/l, γ-GTP 710U/l, LDH 205U/l, CEA 0.6ng/ml, CA19-9 6mg/l, AFP 3ng/ml, HBs抗原 (-), HCV抗体(-)【経過】腹部CTでは早期相にて大小の多発性多血性腫瘍を認め、一部中心部に造影効果を認めずリング状造影効果を認めた。後期相では遷延性造影効果を認め、中心部の造影効果不良部位は、造影効果を認めなかった。MRIではT1 及びT2強調像では低~高信号, Gd-EOB-DTPAの肝細胞造影相では全体的に淡い低信号、造影効果の乏しい部位は低信号を認めた. 以上より肝血管肉腫が疑われ, 確定診断を目的に肝腫瘍生検を行い, 免疫染色まで施行し, 肝血管肉腫と診断した. 第15病日に治療目的でTACEを選択したが効果は認めず、第31病日に死亡退院となる。【結語】肝血管肉腫に対する自然経過や予後因子, 診断方法, 治療方針は確立されていないが, 血管造影, CT, MRIで非特異的な多血性腫瘍を見た場合, 血管系腫瘍も疑い, 組織診断においては血管系マーカーを含めた免疫染色を追加する必要があると思われた. |