セッション情報 特別企画「若手臨床医による消化器疾患の病態ならびに治療に関する基礎研究」

タイトル SP-03:

食道扁平上皮癌細胞と癌間質細胞における膜貫通型糖タンパクPodoplanin発現の意義

演者 日高 元(九州大学大学院 消化器・総合外科)
共同演者 中島 雄一郎(九州大学大学院 消化器・総合外科), 由茅 隆文(九州大学大学院 消化器・総合外科), 笠木 勇太(九州大学大学院 消化器・総合外科), 財津 瑛子(九州大学大学院 消化器・総合外科), 津田 康雄(九州大学大学院 消化器・総合外科), 大津 甫(九州大学大学院 消化器・総合外科), 河野 浩幸(九州大学大学院 消化器・総合外科), 安藤 幸滋(九州大学大学院 消化器・総合外科), 井田 智(九州大学大学院 消化器・総合外科), 木村 和恵(九州大学大学院 消化器・総合外科), 佐伯 浩司(九州大学大学院 消化器・総合外科), 沖 英次(九州大学大学院 消化器・総合外科), 森田 勝(九州大学大学院 消化器・総合外科), 楠本 哲也(九州大学大学院 消化器・総合外科), 前原 喜彦(九州大学大学院 消化器・総合外科)
抄録 【背景】Podoplanin(PDPN)は膜貫通型糖タンパクで、種々の扁平上皮癌の腫瘍先進部で発現し、癌における発現が浸潤、転移と関係することが報告されている。また、癌間質中の線維芽細胞(cancer-associated fibloblast: CAF)は、癌組織の構造や機能の調整役を担う。近年、肝内胆管癌と肺腺癌でPDPN発現陽性CAF症例は予後不良と報告されたが、癌へ及ぼす直接的な影響は未だ解明されていない。【目的】食道扁平上皮癌細胞とCAFにおけるPDPN発現について検討し、生物学的意義を明らかにする。【対象・方法】術前無治療の食道扁平上皮癌切除標本101例を対象に、免疫組織化学染色にて癌細胞とCAFにおけるPDPN発現と臨床病理学的因子、予後との関連を評価し、両者の発現の相関解析およびPDPN発現と臨床病理学的因子の比較検討を行った。【結果】癌細胞、CAFにおけるPDPN陽性率は各56.4%、66.3%であった。癌細胞、CAF相互の発現の関係を検討したところ、癌細胞でPDPN陽性、陰性例でのCAFのPDPN発現率は各84.2%、43.1%であり、両者の発現に正の相関を認めた(P<0.01)。1)癌細胞におけるPDPN発現の検討:PDPN陽性群は、陰性群と比較して、T2以深(P<0.001)、静脈侵襲(P<0.05)を認める症例が多く、予後不良であった(5年生存率;39.9% vs 72.9%、P<0.05)。2)CAFにおけるPDPN発現の検討:PDPN高発現群は陰性群と比較して、T2以深(P<0.01)、リンパ節転移(P<0.01)、静脈侵襲(P<0.01)を認める症例が多く、予後不良であった(5年生存率;35% vs 80%、P<0.01)。【考察】食道扁平上皮癌細胞でのPDPN発現は癌の発育・進展に関与すると考えられた。さらに、その過程においてCAFにおけるPDPN発現が、癌細胞との相互作用をきたすことが示唆された。
索引用語 食道癌, Podoplanin