セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専33:

妊娠中の特発性血小板減少性紫斑病に対し摘脾を行った一例

演者 伊地知 徹也(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学)
共同演者 上野 真一(鹿児島大学医学部 臨床腫瘍学), 迫田 雅彦(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学), 飯野 聡(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学), 南 幸次(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学), 安藤 慶(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学), 川崎 洋太(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学), 橋口 真征(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学), 出先 亮介(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学), 又木 雄弘(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学), 前村 公成(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学), 新地 洋之(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学), 夏越 祥次(鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科学)
抄録 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は薬剤などの原因や基礎疾患が明らかでないにもかかわらず,血小板破壊が亢進し,血小板減少を呈する後天性疾患である.標準治療法としては,まずステロイド療法,次いで摘脾とされる.今回,妊娠後の感冒を契機にITPを発症し,ステロイド治療および免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)が行われたが寛解せず,妊娠24週時に脾摘を行った症例を経験したので報告する.【症例】29歳,女性.元来健康で,平成22年の第一子出産時は問題なし.平成24年2月,第2子妊娠中,感冒にて内服治療施行.3月,上下肢の紫斑出現し,血小板低下を指摘される.以後,精査にてITPの診断をうけステロイド投与が行われたが効果なく当科へ紹介となる.IVIG併用血小板輸血にて血小板数は4万以上まで上昇するが,数日後には2万以下へ下降する状況であった.1)保存的加療では分娩時,母体出血のリスクが高い.2)ITP母体の抗血小板抗体は胎盤を通過して胎児にも血小板減少をきたすため,分娩時に胎児の出血,特に頭蓋内出血の可能性がある等の理由により,産科専門医より人工妊娠中絶の選択肢も提示されたが,強い出産希望により手術の方針となる.手術に際しては,1)妊娠中の気腹による腹腔鏡手術に対しての安全性が明確ではない.2)妊娠25週を越えると,増大子宮によりワーキングスペースが狭くなり操作困難が予想される.3)それまでのIVIG+輸血より血小板推移を予想し,ピーク時の手術が最適,等の条件を考慮し,妊娠24週,血小板数5.8万の状況で開腹による脾臓摘出術を施行した.術後経過は良好で血小板数も順調に上昇し,妊娠39週にて普通分娩後,母子共に問題なく経過している.妊娠中の気腹下腹腔鏡手術やITPの治療方針等,本症例では様々な検討課題と直面したが若干の文献的考察を含めて報告する.
索引用語 ITP, 妊娠