セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研07:

消化管出血を繰り返し治療に難渋したHenoch-Schonlein紫斑病の一例

演者 池田 麻美(九州大学大学院病態機能内科学)
共同演者 近藤 雅浩(九州大学大学院病態機能内科学), 冷牟田 浩人(九州大学大学院病態機能内科学), 冬野 雄太(九州大学大学院病態機能内科学), 前畠 裕司(九州大学大学院病態機能内科学), 一瀬 理沙(九州大学大学院形態機能病理学), 熊谷 好晃(九州大学大学院形態機能病理学), 平橋 美奈子(九州大学大学院形態機能病理学), 中野 敏昭(九州大学大学院病態機能内科学), 鶴屋 和彦(九州大学大学院病態機能内科学), 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 北園 孝成(九州大学大学院病態機能内科学)
抄録 症例は60歳、男性。2012年9月に上腹部痛、嘔気、両下肢痛と紫斑が出現し、近医を受診。検尿で潜血(3+)、蛋白(3+)を認め、紫斑病性腎症が疑われたため、当科紹介入院となった。入院後に施行した腎・皮膚生検でleukocytoclastic vasculitisの所見を認め、Henoch-Schonlein紫斑病と診断した。入院時、腎機能障害に加えて腹痛・貧血を認めたため上部消化管内視鏡検査を施行したところ、十二指腸第二部に多発するびらん・潰瘍性病変が確認された。さらに、カプセル内視鏡検査では十二指腸水平脚ならびに上部空腸に黒色変化を伴う全周性の潰瘍形成を認めた。そのため、原疾患に対してステロイドパルス療法に引き続き経口プレドニゾロン(PSL)30mg/日投与を行ったところ、腹痛、紫斑は消失し腎機能障害も改善した。しかし、PSL20mg/日に漸減したところ黒色便が出現し、Hb 5.0 g/dlと急激な貧血の進行を認めた。そのため内視鏡検査を再検したところ、十二指腸水平脚に全周性潰瘍が残存していた。絶食管理に加え、PSLを60mg/日へ再増量することにより下血は消失したが、PSL40mg/日へ漸減した時点で再度黒色便ならびに貧血の進行を認めた。さらに、内視鏡下にも同潰瘍は治癒傾向に乏しく縮小傾向が見られなかった。そのため、PSL単独では治療効果不十分と判断し、血中トラフ値100~150 ng/mlを目標にシクロスポリンの併用投与を開始した。治療開始2週間後に行ったバルーン内視鏡検査では十二指腸水平脚の全周性潰瘍は縮小しており、治療効果ありと判断した。現在、PSLとシクロスポリンによる併用加療により外来継続加療中である。Henoch-Schonlein紫斑病の消化管病変はステロイド治療に良好に反応する症例が大半である。自験例のように高度な消化管病変を呈し治療に難渋することは比較的稀と考えられたため、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 Henoch-Schonlein紫斑病, 消化管出血