セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 071:

壊死性胆嚢炎との鑑別が困難であった重症型アルコール性肝炎の一剖検例

演者 垣内 誠也(大牟田市立病院 内科)
共同演者 田宮 芳孝(大牟田市立病院 内科), 豊増  靖(大牟田市立病院 内科), 森田 拓(大牟田市立病院 内科), 安本 紗代(大牟田市立病院 内科), 大内 彬弘(大牟田市立病院 内科), 河野 克俊(大牟田市立病院 内科), 則松 宏(大牟田市立病院 内科), 日野  東洋(大牟田市立病院 外科), 島松 一秀(大牟田市立病院 病理診断科), 坂田 研二(大牟田市立病院 内科), 野口 和典(大牟田市立病院 内科), 佐田 通夫(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
抄録 【はじめに】アルコール性肝炎の多くは断酒と適切な治療により比較的速やかに改善する。その中には急激な肝不全や多臓器不全を来し、発症早期に死亡するような重篤かつ予後不良な病型が存在し、重症型アルコール性肝炎と呼ばれている。今回我々は、壊死性胆嚢炎との鑑別が困難であった重症型アルコール性肝炎の一例を経験したので報告する。【症例】33歳男性。以前より大量飲酒によるアルコール性肝障害で精神科受診歴(詳細不明)があった。2012年7月、嘔気嘔吐、心窩部痛が出現し、増悪傾向となったため当院に救急搬入となった。診察所見で眼球結膜に黄疸、心窩部~右季肋部に自発痛と圧痛を認め、血液生化学検査では著明な肝細胞障害型の肝障害を呈していた。各種画像検査にて脂肪肝によると思われる肝腫大と胆嚢腫大及び胆嚢壁の著明な肥厚を認めた。以上より急性胆嚢炎と診断した。抗生剤投与による保存的加療を開始したが、第1病日経過中DICを伴うショック状態となった。胆嚢壊死がその原因と考え緊急胆嚢摘出術を考慮した。しかし開腹所見で胆嚢は正常であり、壊死性胆嚢炎により惹起した病態は否定的であった。その後、積極的な血液浄化法等の集中治療で救命を試みたが、第3病日での永眠となった。病理解剖所見では、肝臓は黄褐色で1868gと腫大し、肝硬変は認めなかった。高度なびまん性の脂肪沈着、実質の亜広汎壊死、胆汁うっ滞、リンパ球浸潤が見られ、好中球浸潤やMallory bodyも散見された。以上より重症型アルコール性肝炎に矛盾しない所見であった。また胆嚢には明らかな胆嚢炎の所見はなかった。【考察】急性肝障害患者の腹部エコー検査では胆嚢壁の肥厚像や内腔の消失などの所見を急性胆嚢炎と誤診することがある。この所見は急性肝障害による炎症の波及など、胆嚢への二次的な影響によるものと考えられる。本症例も壊死性胆嚢炎と診断を誤り、緊急手術に至ったが、病態の原因は重症型アルコール性肝炎であった。急性肝障害における胆嚢のエコー所見の解釈には注意が必要であり、貴重な症例と考え若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 重症型アルコール性肝炎, 急性胆嚢炎