セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 009:

ステロイド抵抗性の重症潰瘍性大腸炎に対しタクロリムス導入し、対照的な転帰をたどった2症例

演者 山本 隆裕(小倉記念病院消化器内科)
共同演者 牟田口 真(小倉記念病院消化器内科), 中村 綾子(小倉記念病院消化器内科), 谷本 治子(小倉記念病院消化器内科), 石垣 賀子(小倉記念病院消化器内科), 青山 浩司(小倉記念病院消化器内科), 吉田 智治(小倉記念病院消化器内科)
抄録 【症例1】37歳男性。下血を主訴に前医受診、CSにて直腸から約25cmにわたり発赤を伴う浮腫状粘膜を認め生検にてUCの診断、加療目的にて当科紹介入院。血液検査上CRP:13.4と高度の炎症所見を認めた。5-ASA:4g/day内服にPSL:60mg/day点滴投与を併用し加療開始、下痢を主体とした症状は改善を認めずステロイド抵抗性UCと判断しDay16よりタクロリムス:2mg/dayにて内服開始、8mg/dayまで漸増するも血中濃度上昇に乏しく血液検査上CRP再上昇し下痢症状の改善も認めず。Day24に腹膜刺激徴候を認め腹部CT施行したところfree airを認めたため当院外科紹介、結腸亜全摘術施行した。【症例2】51歳女性。1週間継続する左下腹部痛、下痢、血便、発熱の症状にて当科紹介受診、入院のうえ経過観察するも症状改善に乏しくday9にCS施行し生検にてUCと診断、5-ASA:3.6g/dayにて加療開始。Day13にはPSL:50mg/day点滴投与開始したが、Day22に大量下血を認めたためステロイド抵抗性UCと判断しDay24よりGCAP開始。GCAP施行中も下血の症状は継続、Day45の血液検査にてHb:4.6と著明な貧血を認めた。GCAP療法にも抵抗性と考えDay47よりタクロリムス:3mg/dayにて内服開始、6mg/dayまで増量し血中濃度は速やかに上昇。その後は下血の症状改善し貧血も改善傾向、PSL漸減可能となった。現在外来通院加療中である。【考察】タクロリムスを内服した際の吸収部位は小腸粘膜である。また現時点ではUCに対するタクロリムス療法の適応は内服のみである。症例1ではCT上、小腸粘膜まで炎症が及んでおりタクロリムス吸収が悪く血中濃度が上昇しなかったが、症例2では小腸粘膜の炎症所見は認めず吸収は比較的良好で血中濃度が速やかに上昇したと考える。タクロリムス導入する際にはCT等にて小腸粘膜の炎症所見の有無を確認し、小腸粘膜に炎症の波及を認める場合は他の治療法を考慮すべきと思われる。
索引用語 潰瘍性大腸炎, タクロリムス