セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研05:

インフリキシマブ投与中に膿疱性乾癬を発症した潰瘍性大腸炎の1例

演者 土田 真平(宮崎大消化器血液学)
共同演者 夏田 朱一郎(宮崎大消化器血液学), 山本 章二朗(宮崎大消化器血液学), 上原 なつみ(宮崎大消化器血液学), 鈴木 翔(宮崎大消化器血液学), 竹田 幸子(宮崎大消化器血液学), 宮原 晶子(宮崎大消化器血液学), 阪口 舞(宮崎大消化器血液学), 橋本 神奈(宮崎大消化器血液学), 山路 卓巳(宮崎大消化器血液学), 安倍 弘生(宮崎大消化器血液学), 三池 忠(宮崎大消化器血液学), 岩切 久芳(宮崎大消化器血液学), 蓮池 悟(宮崎大消化器血液学), 永田 賢治(宮崎大消化器血液学), 前久保 理恵(宮崎大皮膚科学), 下田 和哉(宮崎大消化器血液学)
抄録 インフリキシマブ(IFX)投与中にIFXによると思われる膿疱性乾癬を合併した潰瘍性大腸炎(UC)の1例を経験したので報告する.症例は63歳,男性.20XX年3月発症の全大腸炎型のUCで,5-ASA内服,注腸にて症状の改善なく,4月に当科入院.入院時,中等症であり,大腸内視鏡(CS)ではMatt’s Grade 3であった.感染巣の除外を行った上でIFXを投与した.特に有害事象なく,翌日より血便は消失,下痢も改善した.IFX投与11日後に腹部,背部,四肢に掻痒感を伴う皮疹が出現し,抗アレルギー薬にて数日で消退した.以後UCは寛解状態であり,IFX 3回投与後のCSで治療前に認めた不整型潰瘍やびらん,膿性分泌物は消失し,Matt’s Grade 1であった.しかしIFX 3回投与の約3週後から,全身に強い掻痒感を伴う丘疹状の紅斑が出現した.皮膚生検にて表皮角質層および顆粒層への好中球浸潤,真皮上層に浮腫と血管周囲の好中球,リンパ球浸潤を認めた.これまでの経過と皮膚生検の結果より,膿庖性乾癬と診断された.乾癬はステロイド,抗生剤外用にて次第に消退し,IFXとの関与が疑われることからIFXは中止とした.以降は皮疹の再増悪はなく,UCは5-ASA内服にて加療中である.IFXなどの抗TNF-α製剤は乾癬に対する治療薬として使用されている一方,投与後に乾癬を発症する例も報告されている.炎症性腸疾患(IBD)の腸管外合併症としての乾癬の発生率はCrohn病(CD)で11.2%,UCで5.7%との報告もあるが,2004年に抗TNF-α製剤投与後に乾癬を発症したCD症例が報告されて以降,IBDでのIFX投与後の乾癬発症例の報告は増えている.その特徴として,発症時期は一定の傾向を示さないが,手掌足底に好発し,膿疱性乾癬の表現型をとることが多いこと,局所療法が効果を上げているなどが知られている.IBDにおける乾癬の発症機序は不明であるが,抗TNF-α製剤投与時には膿疱性乾癬の発症に注意する必要があると思われた.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 膿疱性乾癬