抄録 |
症例は82歳女性。元来便秘がちであり下剤を服用することが多かったが、2011年4月頃から下剤を服用しなくても5-6行/日の排便を認めるようになった。スクリーニング目的で施行された検査で貧血、便潜血陽性を認めたため、上部・下部消化管内視鏡検査が行われた。消化管に広範囲にわたり多発するポリープを認め、消化管ポリポーシスの精査目的で8月に当科へ紹介された。低アルブミン血症も進行しており全身状態も不良であったため、入院の上精査を行った。消化管ポリポーシスに加え、脱毛症、爪甲異常、蛋白漏出性胃腸症をはじめとする消化管吸収障害を認めており、Cronkhite-Canada症候群と診断し、プレドニゾロン(プレドニン○R)40mg内服による治療を開始した。徐々に栄養状態は改善してきたが、経過観察目的で施行した下部消化管内視鏡検査ではポリポーシスの改善には乏しかった。また下行結腸に径10mm大とややサイズの大きなポリープを認めた。生検の結果はGroup5であり内視鏡的粘膜切除術を行った。病理結果はwell differentiated tubular adenocarcinoma, pM, ly0, v0, HM0, VM0であった。またその他に認めたサイズの大きなポリープも粘膜切除を行ったところ、過形成様のポリープの他に、腺腫も認められた。Cronkhite-Canada症候群のポリープは非腫瘍性ポリープが主とされるが、大腸癌の合併は15%前後、また腺腫の合併は20%程度とされており、サイズの大きな病変や陥凹を有する病変、またステロイド治療後も残存するようなポリープに関しては、大腸癌や腺腫も念頭に置き、病理学的検索、また内視鏡的粘膜切除術や手術を含めた治療が必要である。またCronkhite-Canada症候群自体の発癌リスクを考えると定期的な経過観察が必要と考えられた。 |