セッション情報 特別企画「若手臨床医による消化器疾患の病態ならびに治療に関する基礎研究」

タイトル SP-04:

障害肝の修復過程における微小環境は腫瘍結節の発育を促進する

演者 椨 一晃(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
共同演者 井戸 章雄(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 熊谷 公太郎(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 豊倉 恵理子(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 大野 香織(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 大重 彰彦(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 小田 耕平(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 今中 大(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 馬渡 誠一(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 玉井 努(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 森内 昭博(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 宇都 浩文(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 桶谷 眞(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【目的】肝細胞癌は慢性肝炎や肝硬変を背景に発生するが、その炎症性発癌の分子機構は未だ明らかになっていない。今回我々は障害肝の修復過程における微小環境が腫瘍結節に及ぼす影響について検討した。【方法】1)8週齢のC57BL/6Jマウスにオリーブ油(対照群)または四塩化炭素1 ml/kg(肝障害群)を単回腹腔内投与し、その2日後にマウス肝癌細胞株Hepa1-6もしくは大腸癌細胞株SL4-GFP (5×105 cells/匹)を脾注した(以下、肝障害/肝癌モデルおよび肝障害/大腸癌モデル)。脾注14日後に安楽死させ、肝重量/体重比、腫瘍生着率、腫瘍結節数または肝内腫瘍占拠率を検討し、肝障害群では肝組織のCD68免疫染色も行った。 2)8週齢のC57BL/6Jマウスに四塩化炭素(CCl4)1 ml/kgを単回腹腔内投与し、経時的に肝マクロファージを単離してVEGF発現をreal-time PCR法で解析した。 3)CCl4投与4日後の肝組織および肝障害/肝癌モデルの肝組織でCD68とVEGFの蛍光二重免疫染色を行った。【結果】1)肝障害/肝癌モデルでは、肝障害群は対照群に比して肝重量/体重比 (0.0550±0.0013 vs 0.0637±0.0074、p=0.0025)、腫瘍結節数 (中央値 0 vs 20、p=0.0129)が有意に増加し、肝臓内への腫瘍生着率は対照群で10% (1/10)、肝障害群で63% (5/8)であった。また、肝障害/大腸癌モデルでも肝障害群で肝重量/体重比 (0.0818±0.0244 vs 0.2413±0.0461、p=0.0039)、肝内腫瘍占拠率 (45±27% vs 98±2%、p=0.0039)が有意に増加した。肝障害群のCD68免疫染色では類洞壁や腫瘍結節周囲にCD68陽性マクロファージが存在していた。 2)VEGFはCCl4投与2日後に有意に発現増強し (p<0.01)、その強い発現は投与8日後まで持続した。 3)CCl4投与4日後の肝組織で、中心静脈周囲の壊死巣に集簇したCD68陽性マクロファージにVEGF発現が認められた。また肝障害/肝癌モデルの肝組織では、腫瘍結節内および腫瘍結節近傍に集簇したCD68陽性マクロファージにVEGF発現が認められた。【結論】障害肝の修復過程におけるVEGF発現の変化が腫瘍結節の発育・進展に関与している可能性が示唆された。
索引用語 組織修復マクロファージ, VEGF