共同演者 |
福嶋 博文(済生会二日市病院), 森田 幸彦(済生会二日市病院), 中馬 健太(済生会二日市病院), 辛島 嘉彦(済生会二日市病院), 酒井 健(済生会二日市病院), 佐藤 公昭(済生会二日市病院), 宮岡 正喜(済生会二日市病院), 成富 一哉(済生会二日市病院), 川畑 方博(済生会二日市病院), 佐田 通夫(久留米大学病院) |
抄録 |
胆嚢穿孔は急性腹症の一疾患であるが, 大部分は有石性胆嚢炎を原因として生じる. 稀に明らかな基礎疾患無しに胆嚢穿孔を起こし, 胆汁が無菌で胆石が無く, 胆嚢炎が無いかごく軽度の事があり, 特発性胆嚢穿孔として定義されている. 症例は59歳男性で, 糸球体腎炎に対して約10年間の透析歴がある. 突然の心窩部痛を主訴に救急外来を受診された. 受診時には腹部全体の圧痛があり, 腹膜刺激症状は認めなかった. 血液検査で炎症反応が軽度上昇していた. 腹部CTで小腸内に餅と思われる高吸収物質が散見された. その後, 大量の排便とともに腹痛が改善したため, 便秘による腹痛と考えた. また, CTで胆嚢壁にごく軽度の浮腫性変化を認めたため, 胆嚢炎の存在を否定できずに絶食管理を行った. 翌日に強い右季肋部痛が出現し, 炎症反応の更なる上昇を認めた. CTで右季肋部を中心に腹水が貯留していたが, 明らかな炎症源は指摘できなかった. 閉塞性大腸炎, 急性胆嚢炎を考え, CTRXの投与を開始した. その後, 腹部症状は改善したが, 炎症反応の改善は乏しく, 肝胆道系酵素の上昇を認めた. CT, MRIでは更に腹水が増加し, 胆嚢底部に壁の連続性が不明瞭にみえる部位を認めた. 腹水の試験穿刺を行い, 腹水は深緑色でビリルビン値の上昇(16.7 mg/dL)を認めた. 細菌培養は陰性であり, 細胞診でも異型細胞は検出されなかった. ERCで造影剤の腹腔内への漏出を確認した. 胆嚢穿孔と診断し, 胆嚢摘出術を施行した. 胆石は認めず, 肉眼的に胆嚢炎の所見も認めなかった. 病理検査でも胆嚢は炎症を伴っておらず, 最終的に特発性胆嚢穿孔と診断した. 術後の経過は良好である. 今回我々は術前に胆嚢穿孔と診断し得た症例を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告する. |