セッション情報 一般演題(公募)

タイトル 046:

上部消化管内視鏡検査を契機に診断されたCowden病の母子発症例

演者 一瀬 理沙(九州大学大学院病態機能内科学 )
共同演者 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学 ), 梅野 淳嗣(九州大学大学院病態機能内科学 ), 鷲尾 恵万(九州大学大学院病態機能内科学 ), 内 博史(九州大学皮膚科学), 熊谷 好晃(九州大学大学院形態機能病理学), 平橋 美奈子(九州大学大学院形態機能病理学), 家守 光雄(かもりクリニック ), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学 ), 北園 孝成(九州大学大学院病態機能内科学 )
抄録 症例1(母)は65歳、女性。2012年3月、定期健診目的で施行された上部消化管内視鏡検査で食道に密生するglycogenic acanthosisを認め、Cowden病が疑われ5月に当科紹介入院となった。入院時、BMI 31.2の肥満と頭囲59cmの巨頭症を認めた。また、歯肉には乳頭腫が密集して見られ、四肢、体幹皮膚に血管腫が散在していた。内視鏡検査では、食道のglycogenic acanthosisに加え、胃、十二指腸、終末回腸、直腸に多発するポリープと小腸に血管腫が確認された。また、乳腺超音波検査で慢性乳腺症を認めた。以上よりInternational Cowden Consortium 2009の診断基準に従って、Cowden病疑診例と診断した。PTEN遺伝子変異を検索したところ、エクソン8にアルギニン→終止コドンとなる変異を認めた。症例2(長女)は38歳、女性。超低出生体重児で出生し、精神発達遅滞を認めていた。29歳時に甲状腺濾胞腺癌に対して右葉切除術が施行された。2012年5月、母親がCowden病疑診例と診断され、本人も甲状腺癌の既往と精神発達遅滞があることから精査目的で8月に当科入院となった。症例1(母)と同様にBMI 31.8の肥満と頭囲 60cmの巨頭症を認め、歯肉乳頭腫が確認された。また、顔面、耳介後部に丘疹と甲状腺左葉に腺腫様甲状腺腫を認めた。内視鏡検査では、食道に密生するglycogenic acanthosis、胃、十二指腸、終末回腸、直腸に多発するポリープと小腸に血管腫を認めた。以上より、本症例はCowden病と診断した。遺伝子解析では母親と同じPTEN遺伝子変異が確認された。Cowden病は、がん抑制遺伝子の一つであるPTEN遺伝子の変異を原因とし、過誤腫が多発する常染色体優性遺伝疾患である。今回、同一のPTEN遺伝子変異を有しながらも母子間で臨床徴候の一部が異なるCowden病の2例を経験したので、文献的考察を加え報告する。
索引用語 消化管ポリポーシス, PTEN遺伝子