セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研44:

急速な増大を示したIPMAの一例

演者 沖本 隆司(産業医科大学 医学部 消化器内分泌外科)
共同演者 森 泰寿(産業医科大学 医学部 消化器内分泌外科), 谷口 竜太(産業医科大学 医学部 消化器内分泌外科), 厚井 志郎(産業医科大学 医学部 消化器内分泌外科), 皆川 紀剛(産業医科大学 医学部 消化器内分泌外科), 山口 幸二(産業医科大学 医学部 消化器内分泌外科)
抄録 【症例】74歳、女性。2006年から膵体部に22mmの嚢胞性腫瘍を指摘され、Intraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)の診断で経過観察されていた。2012年6月、便の狭小化を主訴に下部消化管内視鏡検査施行した際に、S状結腸に3/4周性のType 2病変を認め、Group 5 中分化腺癌の診断で手術予定であった。術前に施行した腹部CTで膵体部の分枝型IPMNは64x59mmと急速に増大しており、S状結腸癌及び分枝型IPMNの手術目的で2012年8月入院となった。既往歴に気管支喘息で重度の閉塞性障害を認めた。糖尿病や膵炎の既往、また膵癌の家族歴はなかった。【検査所見】CEA, CA19-9の上昇以外に、血液検査上、特記所見はなかった。2006年の膵体部の嚢胞性腫瘍病変はサイズが22mmであり、主膵管拡張や壁在結節は認めなかった。しかし2010年からの2年間で病変のサイズが64x59mmに増大した。壁在結節の出現は認めず、術前のERCPの際に行った膵液細胞診はclass Iであったが、尾側主膵管が10mmと拡張を認めた。【手術】急速に増大傾向を示す分枝型IPMN及びS状結腸癌と診断し、膵体尾部脾臓合併切除術、S状結腸切除術を施行した。【病理】膵病変はIPMN with intermediate grade dysplasiaで、免疫染色ではMUC1陽性、MUC2陰性、MUC5AC陽性であった。S状結腸の病変は中分化腺癌、se,n1,ly1,v1であった。【考察】今回の症例は経過観察中に、嚢胞径が30mm以上、尾側の主膵管の拡張を認め、IPMCもしくはIPMN併存膵癌の可能性が疑われたため、手術の方針となった。分枝型IPMNが急速に増大した原因については不明だが、分枝型IPMNが何らかの理由で頭側の膵管との交通が途絶えてしまい、ムチンの産生と共にIPMN自体の腫瘍径が増大し、尾側の主膵管の拡張を来した。または経過観察中に分枝型IPMNが混合型IPMNに進展する自然史を観察し得た, などが考えられた。【結語】急速に増大を示した分枝型IPMNを切除し、結果的にIPMAであった症例を経験した。
索引用語 分枝型IPMN, 急速な増大