セッション情報 一般演題(公募)

タイトル S1-01:

NAFLD患者における脂質粒子サイズの検討

演者 古賀 浩徳(久留米大学内科学講座消化器内科部門)
共同演者 安倍 満彦(久留米大学内科学講座消化器内科部門DELIMITER久留米大学先端癌治療研究センター肝癌部門), 池園 友(久留米大学内科学講座消化器内科部門DELIMITER久留米大学先端癌治療研究センター肝癌部門), 増田 裕(久留米大学内科学講座消化器内科部門DELIMITER久留米大学先端癌治療研究センター肝癌部門), 中村 徹(久留米大学内科学講座消化器内科部門DELIMITER久留米大学先端癌治療研究センター肝癌部門), 鳥村 拓司(久留米大学先端癌治療研究センター肝癌部門), 上野 隆登(朝倉医師会病院), 佐田 通夫(久留米大学内科学講座消化器内科部門DELIMITER久留米大学先端癌治療研究センター肝癌部門)
抄録 症例は42歳、男性。健康診断で肝機能異常を指摘され、当科を受診した。現病歴、血液生化学検査および腹部超音波検査にて非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)、高血圧症、脂質異常症と診断された。身長169 cm、体重72.1 kg、BMI 25.2、血圧154/96 mmHgの他、特記すべき身体所見はなかった。家族歴として、両親に高血圧症、父親に脂質異常症がある。病識は十分で、比較的スムースに持続的な運動療法を受け入れることができた。運動療法前の肝機能および脂質データは、ALT 123 U/L、γ-GTP 65 U/L、total cholesterol (TC) 216.1 mg/dL、high-density lipoprotein (HDL)-C 40.7 mg/dL、low-density lipoprotein (LDL)-C 85.3 mg/dLであった。近年、LDLの中でも特に粒子サイズの小さい(small dense)LDL中のcholesterol (いわゆるsmall dense LDL-C)が、将来の心血管イベントの発生リスクと密接な相関を示すことがわかってきた。そこで、本人の同意を得て、本患者における運動療法前後での心血管イベント発生リスクを評価する目的で、脂質粒子サイズの解析(岡崎らの方法)をおこないsmall dense LDL-Cの動態を検討した。9ヶ月間の運動療法により、体重は66.0 kgまで減少しBMIも23.1まで低下した。肝機能もALT 18 U/L、γ-GTP 19 U/Lと正常化し、画像上、脂肪肝も改善した。しかしながら脂質プロファイルにおいて、TCは195.3 mg/dLと改善していたものの、LDL-Cは101.7 mg/dLとむしろ上昇し、L/H (LDL-C/HDL-C)比も2.10から2.18へと悪化していた。さらにsmall dense LDL-Cの値は運動前の13.43 mg/dLから21.44 mg/dLへと59.6%上昇しており、LDL-C全体の上昇幅(19.2%)より著明に大きかった。これらのことから、NAFLD患者における脂質管理においては、単にBMIやTC値、脂肪肝の改善を達成するだけでは不十分で、潜在的な心血管リスクを減らすためにLDL-Cやsmall dense LDL-Cの動きに留意することが大切であることが示唆された。さらに症例を蓄積し解析中である。
索引用語 small dense LDL, 脂質代謝