セッション情報 シンポジウム4「自己免疫性肝胆膵疾患診療の問題点」

タイトル S4-02:

当科における自己免疫性肝炎の検討

演者 楠元 寿典(宮崎大学第二内科DELIMITER古賀総合病院内科)
共同演者 蓮池 悟(宮崎大学第二内科), 永田 賢治(宮崎大学附属病院肝疾患センター)
抄録 【はじめに】自己免疫性肝炎(AIH)は、中年以降の女性に好発し慢性に経過する肝炎であり、1993年の国際的な診断基準(現基準)や2008年のAIHの国際スコア(新基準)が参考となる。急性発症型AIHには、慢性経過中に急性増悪として発症する「急性増悪」と、慢性肝疾患の病理組織所見がないか軽微な「急性肝炎」の2つの病態がある。【目的】当科におけるAIH症例と、急性発症型AIHの臨床的特徴を明らかにする。【方法】1999年1月から2012年12月に新規に当科でAIHと診断した101例を対象に、急性発症型AIH38例の特徴を後ろ向きに検討した。【成績】男性13例、女性88例、年齢中央値57.9(18.8-83.9)歳、急性発症型38例、慢性経過型63例。組織検査は90例に、ステロイド治療は70例に施行した。現基準では確診65例(64.4%)、疑診33例(32.7%)、基準外3例(3.0%)で、新基準では確診46例(45.5%)、疑診23例(22.8%)、基準外32例(31.7%)であった。急性発症型AIHのうち劇症化は6例、急性肝炎重症型が2例であった。重症度判定(戸田ら 2004)では、重症23例(PT60%未満 17例、T-Bil>5mg/dL 23例)、中等症10例、軽症5例であった。診断基準では、現基準で疑診以上は37例(97.4%)、新基準では29例(76.3%)であった。症状出現または検査値異常から診断確定までに40日前後(中央値40(6-200)日)を要した。33例に組織検査を施行し、線維化を伴わない急性肝炎は2例(6.1%)、F1-F3の線維化を伴うものは28例(84.8%)で、肝硬変は3例(9.1%)であった。組織検査が施行できなかった5例は、臨床的な肝硬変が2例、検査不同意が2例、抗凝固療法1例であった。血清IgG値2000mg/dL未満は12例(31.6%)、抗核抗体が陰性あるいは40倍以下は5例(13.2%)であり、急性発症型と慢性経過型でのスコアリングは、治療前現基準(16.2±3.5vs16.2±3.5)、新基準(6.29±1.3vs5.75±1.7)で有意差はなかった。【結果】当院における急性発症型AIHは背景に慢性肝障害像を示す例が多く、診断基準は現基準が有用であった。専門医療機関への紹介までに時間がかかる症例も多く、早期診断治療に対する啓蒙が必要と考えられた。
索引用語 自己免疫性肝炎, 急性発症型