セッション情報 専修医発表(卒後3-5年迄)

タイトル 専12:

漢方薬が原因と思われる腸間膜静脈硬化症の2例

演者 占部 正喜(大分赤十字病院 消化器内科)
共同演者 上尾 哲也(大分赤十字病院 消化器内科), 都甲 和美(大分赤十字病院 消化器内科), 柳井 優香(大分赤十字病院 消化器内科), 高橋 健(大分赤十字病院 消化器内科), 永松 秀康(大分赤十字病院 消化器内科), 成田 竜一(大分赤十字病院 消化器内科), 垣迫 陽子(大分赤十字病院 検査科), 米増 博俊(大分赤十字病院 検査科), 石田 哲也(大分赤十字病院 消化器内科), 小寺 隆元(佐伯中央病院)
抄録 【目的】特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis、以下IMPS) は最近その疾患概念が確立された、比較的稀な原因不明の腸疾患であるが、近年、漢方の生薬に含有されている山梔子との関連が報告されている.今回、我々は山梔子を含む漢方薬を服用したことが原因と思われる2例のIMPSを経験したのでここに報告する.【症例1】62歳女性.44歳から便秘症に対し防風通聖散を服用している.2012年7月から右下腹部痛が出現し、当科を紹介受診した.腹部X線検査で右下腹部に線状の石灰化を認めた.腹部CTで右下腹部腸間膜静脈の石灰化であることが確認できた.下部消化管内視鏡検査で、上行結腸~横行結腸にかけ粘膜の暗青色化と浮腫を認め、バウヒン弁対側と肝湾曲部には潰瘍形成も認めた.上行結腸から横行結腸にかけての生検で、高度の粘膜下層の線維化と静脈壁の線維性肥厚を認め、IMPSと診断した.漢方薬を中止し、絶食補液で加療し、症状は改善した.漢方薬の中止のまま、現在に至るまで症状の再燃は認めていない.【症例2】31歳女性.26歳からアトピー性皮膚炎の体質改善のために加味逍遥散を服用している.2010年7月から右下腹部を中心とする強い腹痛が出現し、その後も疼痛が継続する為、精査目的で当科を受診した.採血で軽度の炎症値上昇を認めるのみ.腹部X線検査で、右下腹部に線状の石灰化を認めた.腹部CT検査で、右下腹部腸間膜静脈の石灰化を認めた.下部消化管内視鏡検査では、明らかな粘膜の異常所見を認めなかった.盲腸と上行結腸の生検で、粘膜下層の膠原線維の血管周囲性沈着と、静脈壁の線維性肥厚を認めたことからIMPSと診断した.漢方薬を中止し絶食補液抗生剤投与で加療し、速やかに症状の改善を得た.その後、漢方薬中止で、これまで症状の再燃はない.【結語】今回我々は長期漢方薬内服歴のあるIMPS2症例を経験した.双方とも服用していた漢方薬に山梔子の成分が含まれており、IMPSに対し山梔子の成分が何らかの影響を与えていることが推察できた.また山梔子の摂取期間や年齢が、症状や画像所見の軽重に影響を及ぼしていると思われる.
索引用語 腸間膜静脈硬化症, 山梔子