セッション情報 |
研修医発表(卒後2年迄)
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タイトル |
研53:ミリプラチンを用いた経カテーテル的肝動脈化学塞栓術(TACE)に抵抗性を示したがエピルビシンによるTACEが著効した多発肝細胞癌の1症例
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演者 |
遠矢 政和(九州中央病院 内科) |
共同演者 |
東 晃一(九州中央病院 内科), 飯田 三雄(九州中央病院 内科) |
抄録 |
症例は82歳、男性。平成19年胃癌のため他医で胃全摘を受けたが、その際HCV抗体(+)を指摘された。22年12月肝S1に径5.7cm、S2に径2.4cmの肝腫瘍を指摘され、23年1月前医受診。多発肝細胞癌の診断で、以後1月、6月、10月と計3回ミリプラチンを用いた経カテーテル的肝動脈化学塞栓術(TACE)が行われたが、短期間で増加・増大傾向であった。12月当院に転院。当科初診時WBC 4660、RBC 381万、Hb 11.1、Plt 27.0万、PT 127.8%、HPT 112.2%、T.P 7.4、T.B 0.7、AST 97、ALT 72、ALP 323、γ-GTP 96、Ch.E 231、T.C 153、NH3 10、CEA 5.4、AFP 7397(L3 16.8%)、CA19-9 15.7、PIVKA-2 2189。腹部CT検査で肝両葉にリピオドールが沈着した肝細胞癌を多数認め、viableな肝細胞癌も多数指摘された。24年1月血管造影検査を施行し、エピルビシン 50mg+リピオドール 6mLを左右肝動脈より1/2ずつ動注し、左葉のみ多孔性ゼラチン粒を用いて塞栓術を追加した。以後の腹部CT検査ではviableな肝細胞癌を示唆するhigh→low病変を認めず、肝腫瘍マーカーもAFP/PIVKA-2/CEAが24年1月11380.0/3855/6.1→4月46.0/31/4.2→7月4.1/34/4.0と著明に低下し、以後正常値を維持している。 TACEの際に使用される薬剤には、エピルビシン、ジノスタチン・スチマラマー、シスプラチン、ミリプラチンなどが挙げられる。日本肝癌研究会による全国原発性肝癌追跡調査結果によれば、最も使用頻度の高い薬剤はエピルビシンである。近年TACEにおけるエピルビシンとミリプラチンの有効性を比較・検討する文献が散見され、ミリプラチンの治療効果はエピルビシンとほぼ同等とする報告が多いが、白金製剤を使用しTACE抵抗性となった症例に対する他剤の有用性に関しては未だ一定の見解はない。 今回われわれはミリプラチンには抵抗性を示したもののエピルビシンによるTACEが著効した多発肝細胞癌の1症例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。 |
索引用語 |
肝細胞癌, TACE |