セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研27:

胃静脈瘤破裂による上部消化管出血を契機に診断された若年発症の特発性門脈圧亢進症の1症例

演者 平井 良樹(九州中央病院 内科)
共同演者 東 晃一(九州中央病院 内科), 飯田 三雄(九州中央病院 内科), 橋本 直隆(九州中央病院 外科), 北村 昌之(九州中央病院 内科), 赤星 朋比古(九州中央病院 外科)
抄録  症例は24歳、女性。平成24年12月嘔気、吐血のため当院救急外来に搬送された。来院時WBC 4940/μL(N 52.4%)、Hb 10.7g/dL、Ht 32.9%、Plt 18.5万/μL、PT活性 48.9%、APTT-時間 28.4秒、T.P 5.6g/dL、Alb 3.4g/dL、T.Bil 0.4mg/dL、AST 12IU/L、ALT 6IU/L、LDH 110IU/L、ALP 115IU/L、γ-GTP 9IU/L、CRP 0.03mg/dL、HBs抗原(-)、HCV抗体(-)。腹部CT検査で中等度の脾腫及び胃噴門部~弯隆部に著明な静脈瘤を認めたものの、脾腎或いは胃腎短絡路は指摘できず、肝も硬変肝パターンではなかった。緊急で施行した上部消化管内視鏡検査で胃弯隆部~体上部大弯に多数のF2静脈瘤を認め、うち1箇所に直上に血栓が付着した潰瘍を認め、ここが出血点と考えられた。既に止血していたため、とくに治療は追加せず保存的に経過を見たが、翌々日に再度吐血したため、シアノアクリレート+エタノールアミンオレート注入による内視鏡的硬化療法を施行した。入院後NH3 80~90μg/dL程度の高アンモニア血症を認めたが、ICG-R15 3.0%、ANA(-)、AMA(-)、IgG 629mg/dL、IgM 42mg/dLと肝硬変は否定的であり、門脈圧亢進症の原因として特発性門脈亢進症(IPH)を強く疑った。腹部血管造影検査で門脈血流は求肝性であり、著明な脾腫、拡張した脾動静脈及び胃冠状静脈を認め、胃噴門部を主体とする静脈瘤は短胃静脈・後胃静脈を流入路とし、左胃静脈を流出路としていると考えられた。以上よりHassab手術の適応と判断し、用手補助腹腔鏡下Hassab手術を施行した。手術時の肝臓は肉眼的には正常であった。術後の腹部CT検査では胃静脈瘤はほぼ全体が血栓化していた。術後は抗血栓療法を併用し、経過良好である。 若年発症のIPHは非常に稀と考えられる。今回われわれは胃静脈瘤破裂による上部消化管出血を契機に診断された若年発症のIPHの1症例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 特発性門脈圧亢進症, 胃静脈瘤