セッション情報 |
研修医発表(卒後2年迄)
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タイトル |
研50:薬剤性肝障害の合併が示唆された自己免疫性肝炎の1症例
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演者 |
仁田畑 智紀(九州中央病院 内科) |
共同演者 |
東 晃一(九州中央病院 内科), 飯田 三雄(九州中央病院 内科) |
抄録 |
症例は65歳、男性。平成19年以降痛風・高尿酸血症の診断で近医にてクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物、アロプリノール、ジクロフェナクナトリウム、レバミピドなどで加療されていた。21年10月~11月頃より発毛治療のためアルビックス+セファランチンなどの内服を開始し、12月以降エトドラク、ニザチジンを併用していた。23年10月肝障害を指摘され、ジクロフェナク、市販薬(テプレノン+ソウジュツ乾燥エキス+コウボク乾燥エキス)以外を中止し、24年2月には肝逸脱酵素値は正常化していた。24年5月中旬胃もたれのため近医を受診し、AST 334、ALT 658、ALP 193、γ-GTP 91と肝・胆道系酵素値の上昇を指摘され、精査目的で当科受診。WBC 4970、RBC 455万、Hb 15.1、Plt 26.5万、PT 105.2%、HPT 111.0%、T.P 7.8、Alb 4.1、T.B 0.7、D.B 0.3、AST 379、ALT 659、ALP 198、γ-GTP 101、Ch.E 280、T.C 197、HBs抗原(-)、HCV抗体(-)、ANA 160倍(homo 160倍、speckled 160倍)、AMA(-)、AMA-M2(-)、IgG 2053、IgM 90、HCV-RNA(-)、リンパ球刺激試験では市販薬(テプレノン)のみ陽性、各種自己抗体も陰性であり、自己免疫性肝炎(AIH)の国際診断基準に従うとAIHスコア7点であったため、この時点ではAIHよりも寧ろ薬剤性肝障害を疑った。肝・胆道系酵素値は5月下旬にはAST 178、ALT 412、ALP 193、γ-GTP 85と一旦低下したものの、6月AST 540、ALT 911、ALP 246、γ-GTP 200と再上昇し、7月AST 711、ALT 1222、ALP 291、γ-GTP 244と肝・胆道系酵素は更に上昇し、この時点でAIHスコア 11点とAIH疑診となった。肝病理診断では、好中球・好酸球の浸潤は薬剤性肝障害を示唆する所見であったが、自己免疫性肝炎も完全には否定出来ない所見であった。直ちに副腎皮質ホルモン剤を開始し、肝・胆道系酵素値は速やかに正常化した。 薬剤性肝障害との鑑別が困難であるAIHが散見されるが、薬剤性肝障害が契機となってAIHが誘導される可能性も示唆されている。今回われわれは薬剤性肝障害の合併が示唆されたAIHの1症例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。 |
索引用語 |
自己免疫性肝炎, 薬剤性肝障害 |