セッション情報 | 研修医発表(卒後2年迄) |
---|---|
タイトル | 研19:Klebsiella pneumoniae肝膿瘍に髄膜炎、眼内炎、敗血症性肺塞栓を合併したいわゆる侵襲性肝膿瘍症候群の1例 |
演者 | 山本 紗子(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学) |
共同演者 | 中村 憲一(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学), 山田 優里(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学), 大園 芳範(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学), 土持 舞衣(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学), 岩切 久芳(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学), 蓮池 悟(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学), 永田 賢治(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学), 下田 和哉(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学) |
抄録 | 【症例】74歳男性、生来健康で通院歴なし。20XX年1月3日に40度の発熱・右背部痛あり当番医を受診し、感冒と診断された。7日に嘔吐あり前医を受診し、感染性胃腸炎と診断された。8日夜間に悪寒、発熱、意識障害を認め前医へ緊急入院となった。AST47、ALT66、ALP959、BUN86.1、Cr4.9と肝腎障害を認め、CRP20.3、白血球23600と著明な炎症所見を認めた。血小板5.1万、FDP27.2とDICも合併。頭部CTは異常なく、腹部CTにて肝右葉に4cm大の腫瘤を認めた。肝膿瘍が疑われ、エコーガイド下に膿瘍ドレナージを行い(40ml)、抗生剤(CPZ/SBT)の投与を開始した。翌10日に意識レベルの悪化(JCS 200)と呼吸不全を認めたため挿管され、ドクターヘリにて当院へ緊急搬送された。瞳孔不同、対抗反射消失、項部硬直あり、髄液穿刺では塗抹陰性であったが、細胞数569(好中球95%)、蛋白1024mg/dlと上昇しており細菌性髄膜炎が疑われ、抗生剤を変更した(MEPM+VCM)。頭部CTでは脳室の拡大を認め水頭症と考えられた。また、左の眼内炎や肺塞栓も合併していた。DICに対してはトロンボモデュリンを併用し、肝膿瘍に対してはドレナージを行った。血液、膿瘍および痰よりKlebsiella pneumoniaeが検出され、同菌による多発感染症と判断した。基礎に糖尿病はなく、血液疾患や悪性腫瘍も認めなかった。MEPMの投与を継続し、DIC、腎不全は改善し、抜管できたが、意識は回復しなかった。【考察】細菌性肝膿瘍の原因としては経胆道感染が最も多く、経門脈性、経動脈性が次ぐが、原因病巣が同定できない症例も約半数存在する。起因菌としてはE. coliやKlebsiella pneumoniaeなどのグラム陰性桿菌が多い。Klebsiella pneumonia肝膿瘍に髄膜炎、眼内炎、肺塞栓、壊死性菌膜炎など転移性病変を合併する症例が、近年台湾、シンガポールなど東アジアで増加しており、侵襲性肝膿瘍症候群と呼ばれている。Klebsiella pneumoniae肝膿瘍を認めた場合、侵襲性肝膿瘍症候群の可能性を考え他臓器の精査も行う必要があると考えられた。 |
索引用語 | 肝膿瘍, 髄膜炎 |