セッション情報 一般演題

タイトル 113:

進行膵癌の化学療法中に発症したTrousseau症候群の一例

演者 薮谷 亨(浦添総合病院)
共同演者 富里 孔太(浦添総合病院), 普久原 朝史(浦添総合病院), 近藤 章之(浦添総合病院), 松川 しのぶ(浦添総合病院), 中村 公子(浦添総合病院), 仲村 将泉(浦添総合病院), 小橋川 嘉泉(浦添総合病院), 仲吉 朝邦(浦添総合病院), 内間 庸文(浦添総合病院), 金城 福則(琉球大学付属病院・光学医療診療部)
抄録 【症例】70代 女性【現病歴】2型糖尿病で通院中。2012年12月中旬に右季肋部痛が出現。画像諸検査にて膵鉤部に35mmの腫瘍と多発肝腫瘍、さらに総胆管および肝内胆管拡張と主膵管拡張を認めた。上部内視鏡では十二指腸下行脚に腫瘍浸潤をみとめスコープ通過不可能であった。腫瘍マーカーはCA19-9 438U/ml、Span-1 57.9U/mlと高値を認め進行膵癌と診断した。倦怠感強く食事も摂取困難となり2012年12月末日入院となった。【入院後経過】2012年末から2013年1月初めにかけてT-bilが2から8mg/dlと急上昇したため、化学療法に先立ち経皮経肝的胆道ドレナージを実施した。1月上旬よりS1+ゲムシタビン併用療法を開始したが、1コースでgrade 3の食思不振と嘔気をみとめ、2コース目はゲムシタビン単剤に変更した。2コース2投目のゲムシタビン投与6日後、左方注視麻痺と軽度の頭痛と嘔気を認めた。頭部CTにて右側頭葉から後頭葉にかけてのlow density areaを確認し、頭部MRI・DWIにて右側頭葉から後頭葉にかけての高信号域、さらに両側小脳半球および両側大脳半球に散在する高信号域を認めた。MRAでは主幹動脈に狭窄所見なし、心電図と心エコーは正常、血液検査ではTAT 82.2ng/ml FDP 52.5μg/ml、D-dimer 28.2μg/mlと凝固異常を認めたことから膵癌に伴うTrousseau 症候群と臨床診断した。ヘパリン持続静注とエダラボン点滴で治療開始、約1週間で症状は安定し、一時は自立生活レベルまで回復していた。しかしその後胆管炎、難治性高血糖などを合併し、徐々に傾眠となり、脳梗塞発症から約50日後に永眠された。【考察】Trousseau 症候群は悪性腫瘍にともなう凝固能亢進状態から脳卒中症状をきたす傍悪性腫瘍症候群の一つである。同症候群は進行膵癌において比較的高い発症率といわれているが、病因に関しては未解明な点も多い。悪性疾患の経過中に発症した脳梗塞では同症候群を鑑別に入れる必要があり、また多発性/再発性脳梗塞では潜在性の悪性疾患を考慮する必要がある。若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 Trouseau 症候群, 膵癌