セッション情報 シンポジウム1「高齢者に対する消化器病診療と今後の展望(消化管、肝胆膵)」

タイトル S1-12:

高齢者に対する生体肝移植の適応と成績

演者 池上 徹(九州大学 消化器・総合外科 )
共同演者 調  憲(九州大学 消化器・総合外科 ), 別城 悠樹(九州大学 消化器・総合外科 ), 今井 大祐(九州大学 消化器・総合外科 ), 王  歓林(九州大学 消化器・総合外科 ), 山下 洋市(九州大学 消化器・総合外科 ), 二宮 瑞樹(九州大学 消化器・総合外科 ), 井口 友宏(九州大学 消化器・総合外科 ), 吉屋 匠平(九州大学 消化器・総合外科 ), 木村 光一(九州大学 消化器・総合外科 ), 松本 佳大(九州大学 消化器・総合外科 ), 中川原 英和(九州大学 消化器・総合外科 ), 池田 哲夫(九州大学 消化器・総合外科 ), 川中 博文(九州大学 消化器・総合外科 ), 吉住 朋晴(九州大学 消化器・総合外科 ), 前原 喜彦(九州大学 消化器・総合外科 )
抄録 (はじめに)生体肝移植は、非代償性肝硬変あるいは急性肝不全に対する強力な治療手段の一つとして広く認知されるようになり、安定した成績も得られるようになった。しかし、高齢レシピエントに対するその適応と成績に関する報告は少ない。(対象と方法)当科において2012年05月までに施行した生体肝移植478例の内、成人間肝移植411例を対象とし、高齢群(65歳以上のレシピエント、n=46)と非高齢群(65歳未満、n=365)間に於ける比較検討を行った。生体肝移植の適応は肝臓以外の全身臓器機能が維持できており、肝移植により生命予後が期待できる事としてきた。(結果)高齢群のレシピエント平均年齢は67.0歳であり、最高齢は73歳であった。一方非高齢群のレシピエント平均年齢は49.8歳であった。レシピエント背景因子としては、高齢群では非高齢群に比し女性(67.4% vs. 51.5%、p=0.04)、C型肝炎(71.7% vs. 36.9%、p<0.01)、肝癌症例(76.1% vs. 37.8%、p<0.01)が多く、身長(154.5cn vs. 161.1cm、p<0.01)、体重(55.6kg vs. 60.7kg、p<0.01)が小さく、MELDスコアが低値(14.8 vs. 17.5、p=0.02)、入院での全身状態のコントロールが不要である症例が少ない(28.3% vs. 49.2%、p<0.01)ことが挙げられた。またドナー因子としては、グラフト重量が高齢群で小さく(433 g vs. 484g、p<0.01)左葉グラフトが多い(80.4% vs. 59.7%、p=0.02)以外は、ドナー年齢、グラフト/標準肝容積比に差は認めなかった。一方術後に関しては、高齢群は非高齢群に比し有意に急性拒絶反応を発症率が低率(4.3% vs. 16.1%、p=0.03)であったが、その一方で術後一過性の脳機能障害あるいは精神症状を呈することが高率(32.6% vs. 17.3%、p=0.01)であった。しかしながら両群で術後の敗血症、サイトメガロウイルス感染の発症率に有意差は認めなかった。高齢群および非高齢群のグラフト5年生存率はそれぞれ89.8%および79.3%であった(p=0.21)。(まとめ)高齢者であっても非高齢者と同様の適応基準に従い生体肝移植を適応し、良好な生命予後を得る事ができた。
索引用語 生体肝移植, 高齢者