セッション情報 ワークショップ4「炎症性腸疾患 最近の治療」

タイトル WS4-05:

難治性潰瘍性大腸炎患者に対するtacrolimus及びinfliximabの治療効果と安全性の検討

演者 貫 陽一郎(九州大学大学院病態機能内科学)
共同演者 浅野 光一(九州大学病院光学医療診療部), 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学)
抄録 【目的】難治性潰瘍性大腸炎(UC)に対するtacrolimus(TAC)とinfliximab(IFX)の治療効果ならびに安全性を比較する。【方法】2009年9月から2013年3月までに当科でTACないしはIFXによる寛解導入・維持療法を行った難治性UC 34例(TAC群:15例、IFX群:19例)を対象とし、投与開始10週後の寛解率と有効率、長期経過における非再燃率、および有害事象を比較した。さらに、それぞれの治療群における再燃リスク因子についても検討した。UCの臨床的活動度の評価にはSeoらのulcerative colitis activity index (UCAI)を用い、150以下を有効、120以下を寛解と定義した。また、再燃の定義は寛解維持療法中に原疾患の増悪により、20mg/日以上へのステロイド増量、IFX投与間隔短縮、他薬剤への変更、あるいは手術を行ったものとした。【結果】TAC群とIFX群における治療開始時の臨床的因子は両群間で差を認めなかった。投与前UCAIはTAC群で201.4 ± 22.3、IFX群で203.6 ± 34.7であったが、治療開始10週後のUCAIはそれぞれ105.6±11.0、101.1±14.1と有意に低下していた。治療開始10週後の寛解率および有効率は、TAC群で80.0%、93.3%、IFX群で78.9%、89.5%であり、いずれも2群で差を認めなかった。治療開始時の平均ステロイド投与量はTAC群で12.0mg/日、IFX群で12.4mg/日であったが、10週後にはそれぞれ4.2mg/日、3.8mg/日へ減量可能で、各群ともステロイド投与量は有意に低下していた。寛解導入療法が有効であった31例(TAC群:14例、IFX群:17例)における累積非再燃率はTAC群で57.1%、IFX群で61.3%であったが、TAC群の1例とIFX群の2例で追加手術を要した。有害事象はTAC群で15例、IFX群で6例観察されたが、副作用により投与中止となった症例はなかった。再燃リスク因子の検討では、IFX群で左側大腸炎型が全大腸炎型と比較して有意な再燃リスク因子(オッズ比 7.05:p=0.045)として抽出されたが、TAC群では明らかな再燃リスク因子は認めなかった。【結語】難治性UCに対してTACとIFXは同等の寛解導入・維持効果ならびに安全性を有すると考えられた。
索引用語 潰瘍性大腸炎, tacrolimus