セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研34:

後腹膜原発の脱分化型脂肪肉腫の一例

演者 河野 圭希(中津市立中津市民病院)
共同演者 廣石 和章(中津市立中津市民病院)
抄録 症例は68歳女性。約3ヶ月間持続する便秘を主訴に近医を受診したところ、触診とエコーで左の後腹膜腫瘤を指摘され、精査加療目的で当科紹介となった。既往歴:20歳時に右卵巣嚢腫摘出術、42歳時に左乳癌摘出術。入院時現症では、腹部は平坦、軟で、左下腹部に約10cmの圧痛を伴う可動性不良の腫瘤を触知した。CTでは左腸腰筋の腹側に約10cm大の充実性部分と嚢胞性部分が混在し石灰化を伴う腫瘤を認めた。また、腫瘤の圧迫あるいは浸潤のため、左腎は水腎症をきたしていた。MRIではCTと同領域に内部がT1W1で軽度高信号を呈する比較的境界明瞭な腫瘤を認めた。鑑別診断として神経原性腫瘍、平滑筋肉腫、あるいは脂肪が見られない脱分化型脂肪肉腫などが考えられた。水腎症治療のため尿管ステント留置後に、後腹膜腫瘍摘出術を施行した。開腹時、腹水や腹膜播種は認めず腫瘍は下行結腸側の結腸間膜下に新生児頭大の大きさで存在していた。結腸間膜を切開したところ、腫瘍と下腸間膜動脈が強固に癒着していたため、これをテーピングして鈍的に剥離を進めた。内背側では左尿管も腫瘍と強固に癒着していたため尿管をテーピングした。上部尿管には腫瘍の直接浸潤が疑われたが、可及的に剥離可能であった。内背側ではさらに腸腰筋にも浸潤が認められた。外背側においてGerota腎筋膜との境界で剥離を進めて腫瘍を摘出した。病理診断は後腹膜脱分化型脂肪肉腫で、確定診断には細胞遺伝子学的手法を用いた。術後は軽度のイレウス症状が出現したものの、保存的加療で軽快し、術後22病日に自宅退院となった。脱分化型脂肪肉腫は「高分化型脂肪肉腫から発生した、脂肪を形成しない高悪性度腫瘍」と定義される。脂肪肉腫のうち高分化型が占める割合は40~50%で最も頻度が高いが、脱分化型はさらにその6~10%と比較的稀な疾患である。今回我々は、細胞遺伝子学的手法を用いて確定診断に至った後腹膜原発の脱分化型脂肪肉腫の一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 後腹膜腫瘍, 脂肪肉腫