セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研44:

SLEの経過中に急性発症した自己免疫性肝炎による急性肝不全非昏睡型の1例

演者 平良 浩菜(琉球大学医学部附属病院医師第一内科)
共同演者 海田 正俊(琉球大学医学部附属病院医師第一内科), 田村 次朗(琉球大学医学部附属病院医師第一内科), 新垣 伸吾(琉球大学医学部附属病院医師第一内科), 柴田 大介(琉球大学医学部附属病院医師第一内科), 前城 達次(琉球大学医学部附属病院医師第一内科), 金城 福則(琉球大学医学部附属病院光学医療診療部), 藤田 次郎(琉球大学医学部附属病院医師第一内科), 大城 武春(沖縄県立南部医療センターこどもセンター 消化器内科), 岸本 信三(沖縄県立南部医療センターこどもセンター 消化器内科)
抄録 【はじめに】全身性エリテマトーデス(SLE)に重症肝障害を合併した場合、SLE単独の肝障害の可能性は低く他の原因を鑑別する必要がある。その場合、同じ自己免疫性疾患である自己免疫性肝炎(AIH)の合併もあげられるが、その合併率はそれほど高率ではない。今回、我々はSLE経過中に重症肝炎を発症し、病理学的に急性発症型AIHと診断した症例を経験したので文献的考察を踏まえて報告する。【症例】19歳女性 【主訴】発熱、全身倦怠感、食思不振 【既往歴】SLE 【生活歴・家族歴】特記事項なし【現病歴】2012年6月にSLEと診断され、ステロイドを中心に治療介入するもステロイド依存性の状態で、これまで複数回のステロイドパルス療法が施行されていた。2013年4月に発熱・関節痛に加えて悪心が出現。経過観察していたが症状は増悪傾向を示し、黄疸を伴う著明な肝機能障害が出現したため、精査加療目的に当院へ転院となった。【入院後経過】入院時、バイタルに著変なく、全身倦怠感及び眼球結膜黄染を認めた。羽ばたき振戦はなく、肝性脳症は認めなかった。血液検査にてAST 2420 IU/L、ALT 2920 IU/L、T-Bil 7.0 mg/dl、D-Bil 4.4 mg/dl、PT% 32.1 %と高度の肝障害を認めた。この時点で明らかな原因は不明であったがステロイドの効果が期待できる病態を第一に疑い、ステロイドパルス療法を施行。難治性の肝疾患調査研究班の劇症化予知式で求めた劇症化率は48.3%であり、血液浄化療法や肝移植も検討したが、幸いにもステロイドへの反応は良好であった。第7病日に施行した肝生検ではCentrizonal necrosisを認め、急性発症のAIHに矛盾しない所見であった。その後、PSL 60 mg/dayまで漸減しても肝炎は再増悪なく、逆にSLE症状の増悪を認めたためSLEに対する加療目的に前医へ転院となった。転院後もAIHの増悪は認めていない。【結語】臨床的に急性肝炎様の経過をとるAIHはそれほど稀ではないが病理学的には慢性肝炎の組織像を呈することが多い。本症例のように臨床的に急性肝炎様、組織学的にも急性発症様の所見を呈する症例は稀であり、貴重な症例と思われた。
索引用語 自己免疫性肝炎, Centrizonal necrosis