セッション情報 ワークショップ3「進行肝細胞癌診療の現状と問題点」

タイトル WS3-03:

肝動注化学療法によるdownstaging後肝切除で長期生存が可能となる切除不能進行肝細胞癌の検討

演者 永松 洋明(公立八女総合病院肝臓内科)
共同演者 平城 守(公立八女総合病院外科), 出口 章広(公立八女総合病院肝臓内科), 小野 典之(公立八女総合病院肝臓内科), 鳥村 拓司(久留米大学消化器内科), 佐田 通夫(久留米大学消化器内科)
抄録 【目的】当院では進行肝細胞癌に対してcancer freeを、可能であればdownstaging後肝切除を目標に、肝動注化学療法(HAIC)を中心とした治療を行っている。当院におけるHAICの治療成績をretrospectiveに検討した。【対象】2003年6月から2013年5月の期間当院にてリザーバーを用いたHAICを行ったHCC症例216例のうち、Stage III、IV-B症例を除いた136例(Child Pugh A/B/C:70/50/16例、PVTT Vp2/3/4:64/48/24例、Regimen Low dose FP(LFP)/New FP(NFP)/その他:35/92/9例)を対象とした。【方法】136例のHAIC開始後累積生存期間(OS)をKaplan-Meier法で示し、また累積生存率に関連する因子はそれぞれLog Rank検定で比較検討を行った。肝切除が可能となる条件に関してはロジスティック回帰分析を行って検討した。【結果】全体のHAIC開始後のOSは1年/3年/5年:60/29/16%で、中央値(MST)で16カ月。肝機能別ではChild Pugh A/B/C:27/16/4カ月(P=0.001)、PVTT別ではVP2/VP3/VP4:28/12/10か月(P=0.005)、regimen別ではLFP/NFP/その他:10/23/7カ月(P<0.001)であった。動注効果ではCR/PR/SD/PD=15/79/26/16例で奏効率は69.1%であった。効果別MSTはCR/PR/SD/PD:39/26/7/4カ月(P<0.001)であった。PR症例で追加治療によりcancer freeが得られた症例を加えると58例(42%)でcancer freeが得られ、MSTは44カ月であった。そのうち肝切除が可能となった症例は12例(Child Pugh Aを対象とすると17%)で、5年生存率は81%(中央値は得られていない)であった。肝切除に関与する因子は、有意なものなかったが、最大腫瘍径では10cm以上が4例、VP3が4例、腫瘍個数10個以上3例(25%)、肝両葉が4例(33.3%)、RegimenではNFPがが11例(91.6%)であった。【結論】進行HCCに対するHAICにおいて肝機能良好で動注効果がみられ、積極的にcancer freeとすることで肝機能や肝動脈が保持され良好な生存に寄与する。さらに肝切除が可能であれば長期生存が得られる。腫瘍個数が多く、肝両葉に病変が存在しても、HAICにより片葉のコントロールができると肝切除が可能となった。
索引用語 進行肝細胞癌, 肝動注化学療法